東洋学へのコンピュータ利用(3)2008-04-01

2008/04/01 當山日出夫

京大での「東洋学へのコンピュータ利用」について、再開。

甲骨文字処理にまつわるエトセトラ 守岡知彦

昨年の「じんもんこん2007」(京大会館)の発表の続き……と思って聞いた。そういえば、この発表のときの、司会(座長)は、私の担当であった。このとき、京大会館に設置のプロジェクタと、守岡さんのマックが、うまく接続できなくて、かなり時間のロスがあったのを覚えている。しかし、今回は、見事に、すぐにつながった。

ところで、今回の「東洋学へのコンピュータ利用」は、新しい京都大学人文科学研究所で開催された。まだ、年度内で、最後の内装工事中という状態。しかし、コンピュータ関係のシステムは、トラブル無く動いた。

パワポ用のスクリーンは、用意してあったが、安岡さんの発案によるものか、部屋の壁そのものをスクリーンとして利用することになった。真っ白の壁ではないので、色彩の点で難点がないではない。しかし、それを言い出すのならば、使用するプロジェクタの性能から問題にしなけばならない。結果的には、部屋の壁をスクリーンがわりに使うというのは、非常によいアイデアであったと思う。

それはさておき、守岡さんの発表は、甲骨文字データベース構築の問題からスタートする。そうすると、そのことによって、いろんな課題が見えてくる。

甲骨文字をデータベース化しようとしたとき、文字の単位をどう認定するか、という基本的であるが、困難な問題がある。一般に、甲骨文字は、漢字の原初形態と考えられている。つまり、現在の漢字の先祖である。だが、だからといって、現代の漢字と連続的につながっているか……と、あらためて考えてみると、ひとすじなわではいかない。

現代の漢字(その代表が『康煕字典』であろう)から、あるいは、さかのぼっても、『説文解字』をとおして、認定された「単位」で「文字」を、認識することになる。ここで、「言語(ことば)」の視点をもちこむならば、甲骨文字を使用した人々と、現代の中国の人々(とりあえず、いわゆる「中国語」としておく)で、同じといえるだろうか。

ここで問題になるのは、第一に、音声言語として通じるかどうか(これは、おそらく通じないだろう)。あるいは、そもそも、甲骨文字は、いかなる音声言語に、どのように対応するものなのか。第二に、その文字を使用する目的は、現代の漢字と、甲骨文字とでは、大きく環境がことなる。現代に通じる、伝達と記録のための文字という視点で見るならば、秦~漢の時代まで下るだろう。

守岡さんの発表は、甲骨文字という限定的なものについてであったが、その射程とするところは、「ことば」と「文字」についての、本質的な議論へと発展していくことになる。

當山日出夫(とうやまひでお)

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