『人は見た目が9割』2008-04-03

2008/04/03 當山日出夫

基本的に、ベストセラー、の類には手を出さないことにしているが、ちょっと落ち着いたところで買って読んでみる。

Amazonなどのコメントでは、きわめて、評判が悪い。そうなると、天の邪鬼な人間としては、かえって、評価してみたくなる。

まず、何故、この本が売れたのだろうか。確かに、タイトルの良さ、はあるだろう。だが、タイトルだけで本が売れるものではない。この本を買った多数の読者は、何をもとめていたのか。

おそらく、それは、円滑な対人コミュニケーションとは……ということであろうと思う。全体として、非言語コミュニケーション入門の軽いエッセイ集、として読めば、いいのだと思う。全体を、非言語コミュニケーション論の学術的な本、としてうけとってしまうと、(私であっても)酷評したくなる。もちろん、マンガ論として読めば、レベル以下としか言いようがない。だが、ざっと通読した印象は、さほど悪くはない。

かたくるしい「文章読本」や「礼儀作法」から、少し距離をおいて、かるく読める本として、ちょうど時代に要請にこたえた本である、というところであろうか。

ところで、「人は見た目が9割」という。では、残りの1割は、何であるのか。「見た目」ではない「言語」によるコミュニケーションであっても、9割と1割がある。

音声言語では、その「声」や「話し方」によって、伝わる内容は違う。また、書記言語(文書)であっても、用紙の選択や、文字サイズ・フォント、全体のレイアウトによって、「それらしく」見える。

アカデミック・ライティングという名称で、学生に、論文の書き方の初歩を教えている。その冒頭で、まず、こう言う……アカデミック・ライティングというのは、論文を、それらしい体裁で書くことである、と。つまり、論文も「見た目」なのである。

その「見た目」の内容のなかには、参考文献の書き方・引用の仕方・注の付け方、などがふくまれる。「見た目」といっても、それを考えると、「文書」(文章ではない)の構造、が見えてくる。

當山日出夫(とうやまひでお)

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