『ARG』321号:知事のHPのデジタルアーカイブ2008-05-05

2008/05/05 當山日出夫

ARGの321号について。

「アーカイブ」「デジタルアーカイブ」の視点からは、やはり、大阪府と熊本県の知事のウェブの一貫性の問題。これは、きわめて時宜を得た問題点の指摘であると思う。

「アーキビスト」を公的な資格(大学院修士課程)とする動きがある。そのなかで、「デジタル」のコンテンツを、いかに保存するか、が重要になってくる。

結論からいえば、ウェブ・コンテンツは、その文書の発生時点において、デジタル、である。ひょっとすると、知事が、原稿用紙にペンで書いたものを、エディタで入力して、ということもあるかもしれないが、まあ、たぶん、これはないだろう。

このとき、コンテンツの保存については、

第一に、文書の発生の時点において、デジタルであるものは、デジタルアーカイブとして保存するべきである。

第二に、文書の構造(文書群全体の中での位置づけ)が重要である。この視点からは、他のウェブ・コンテンツとの関係(リンクの関係)が重要。これも保存の対象となる。

第三に、文書は、テキストである(文字だけ)。しかし、ウェブとして公開されたときには、なにがしか、デザイン的要素をともなう。これもまた、デジタルの環境のなかでしか保存できないものである。

第四に、最終的な公開コンテンツにいたるまでの、草稿段階の資料があるならば、それも、資料館・公文書館において保存すべきである。これは、プリントアウトの紙かもしれないし、WORD文書やPDFにコメントのついたものかもしれない。どのようなプロセスで、公開の最終稿にいたったのか、その過程の資料も重要である。これも、デジタルアーカイブでしか、残せないものである可能性がある。

知事のウェブでの発言記録は、公文書である。それを残すには、デジタルアーカイブしかない。このことに、アーカイブにかかわる人たちは、もっと積極的にとりくむべきであろう。

他にも、ARG321では、面白い記事があるが、とりあえず、今の、私の関心からは、以上のことを記しておきたい。

當山日出夫(とうやまひでお)

追記

ARGのURLとトラックバックの指定を忘れてしまったので、ここに記す。

ARG

http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/

知事HPについては、

http://d.hatena.ne.jp/arg/20080505/1209918278

デジタル・キューレーション2008-05-05

2008/05/05 當山日出夫

今から考えれば、この集まりには、行っておくべきだったと、残念でならない。

2008年3月15日 慶應DMC

シンポジウム デジタル映像アーカイブズの可能性 大学ミュージアム=アーカイブズを考える III

「デジタルアーカイブ」の授業の準備で、あれこれと、グーグルで検索をかけてみていると、「デジタル・キューレーション」の語が目についた。そこからリンクをたどっていくと、上記のシンポジウムで、次の発表があった。

デジタル・キューレーションの可能性 -食卓に映しだされた“昭和”と日本の生活文化-

岩渕潤子(慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授)

ここで触れられている、『食卓に映しだされた“昭和”と日本の生活文化』は、

http://www.documentshowa.jp/

である(と、判断する)。なお、このHPは、大日本印刷の、artscape からもたどれる。

アートスケープ

http://www.dnp.co.jp/artscape/index.html

デジタルアーカイブスタディ

http://www.dnp.co.jp/artscape/artreport/study/0803.html

『食卓に~~』は、俳優・三木のり平が出演したTVのCMの、デジタルアーカイブである。作っているのは、なんと、文化庁、である。(ただし、「食滞に~~」をキーワードにしても、グーグルでは出ない。英語で、「History of Showa」を入れると、トップに出る。

それはともかく、すでに、「デジタル・キューレーション」の語が使われはじめていることには、注目しなければならない。そして、英語で、「Digital Curation」で、グーグルで検索をかければ、膨大なヒット数である。

私が無知であったと言われればそれまでであるが、「デジタルアーカイブ」の是非をめぐって議論している、日本のアーカイブの状況が、なんとも情けなく思えてならない。

このような日本の状況については、「デジタルアーカイブ論」の授業で語ることにしよう。しかし、後、実質的に3回しかない(映像学部は、クオータ制なので。)

當山日出夫(とうやまひでお)

付記

キューレーター、キューレーションの語は、あまり日本語として定着していない。うっかりそのまま使ってしまった。キューレーターは、日本語でいえば、博物館・美術館の学芸員のこと。キューレーションは、その仕事のこと、になる。

英和辞典をひくと、「館長」の訳語がでる。しかし、図書館・美術館の管理責任者というべきであろう。