『タンゴステップ』2008-06-22

2008/06/22 當山日出夫

ようやく読み終わった。普通には、このての本は、いっきに読んでしまうのがわかりやすいし、面白いのだが、最近、まとまった時間がとれなくて、切れ切れの時間で読んだ。

ヘニング・マンケルのこれまでの作品、創元推理文庫のものは、全部、刊行された順に読んでいる。これまでは、すべて、クルト・ヴァランダーを主人公とするシリーズ。『タンゴステップ』は、これとは別系列に属する。

よく出来たミステリは、読み終えてから、もう一度最初にもどって、読み返す価値がある。この作品も、まさに、その典型といえよう。別に、最初のページに、犯人に直結する手がかりが堂々と書いてある、というわけではない。(この種の傑作はあるが、作品名を書くだけで、ネタばらしになるので、やめておく)。

プロローグは、ナチの戦犯の絞首刑からはじまる。そして、いっきに、時代は現代のスエーデンになる。

ヘニング・マンケルの作品は、解説によると、ヨーロッパでは非常に売れているという。むべなるかな、と思う。クルト・ヴァランダーのシリーズもそうであるが、現代のヨーロッパ社会の、いろんな社会問題をテーマにしている。

日本では、かつて、「社会派推理小説」というのがあった。それへの否定、克服というような流れのなかに、現代の「本格」がある。現代の「本格」が登場したとき、逆に、「社会」を忘れてしまった……これは、これでいいのかもしれない。しかし、ヘニング・マンケルの作品を読むと、今の日本のミステリの状態……強いていえば、「社会」から離れてしまうか、逆に、過激になるか……に、一抹のさびしさを感じないではない。

なお、この本の刊行にあわせて、『第三帝国の興亡』が刊行されているのは、出版社の都合か。

『タンゴステップ(上・下)』(創元推理文庫).ヘニング・マンケル(柳沢由実子訳).東京創元社.2008

當山日出夫(とうやまひでお)