『ARG』328号:公開という名の死蔵 ― 2008-06-23
2008/06/23 當山日出夫
ARGの328号について、すこし。
編集日誌
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080622/1214145550
今回の号の内容で、個人的に興味深いのは、国立民族学博物館の松尾三憲旧蔵絵葉書コレクションである。
この作成にたずさわった人々が記されている。実は、このうち、何人かは、かなり親しい関係にある。だが、このこととは別に、その利用条件が気になる。学生に、映像学部の「デジタルアーカイブ論」など、講義する立場になると、そのデータが商業的に利用可能かどうか、この点が、最大に問題点である。
一般の学生相手であれば、アカデミックな利用、教育目的の利用、という範囲で考えればすむ。しかし、映像コンテンツに、将来、かかわろういう学生にとっては、商業利用可能かどうか、が課題になる。
松尾三憲旧蔵絵葉書コレクションでは、
このデータベースの著作権は、国立民族学博物館に帰属します。
著作権者に無断で転載・複製等を行うことはできません。
とある。だが、これだけでは、どの範囲で利用可能であるのか、まったく不明なままである。完全に商業利用不可であるのか、あるいは、規定の料金が課金されるのか。
また、転載・複製(一般的には、コピー)は不可であるとしても、「引用」は、どの範囲で許されるのか。各種の、デジタル・アーカイブが構築・公開されていくなかで、このあたりが、今後の最大の課題であろう。「公開」はしてみたが、誰も「利用」できない、ということが起こりかねない。
この点、編集日誌に記載の、法政大学大原社会問題研究所の戦前ポスターデータベースは、利用規程が明確である。
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/kensaku/poster.html
著作権について
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/about/copyright.html
これはいい。だが、商業利用はできない。実は、この点(資料の商業利用)は、JADS(アート・ドキュメンテーション学会)で発表があった「写し絵」とも、深く関連する。
結論から書いておけば、公開・保存という名のもとでの、死蔵、である。このことは、次回のJADSの感想で。
當山日出夫(とうやまひでお)
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