新常用漢字:俺2008-07-16

2008/07/16 當山日出夫

小形さんの「もじのなまえ」の最新号で、直近の、漢字小委員会の様子がだいたいわかる。

もじのなまえ

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20080715/p1

今度の(新)常用漢字表で、もっとも問題になっている(?)、「俺」について、笹原さん(早稲田)から、正しく書けない学生がいるので教えるべきだ、の趣旨の発言があったよし。

別に「俺」が手書きで書けなくても、人間、生きていくうえで支障はないだろう。しかし、ことばとしての「おれ/オレ/俺」は、必要である。(本人が使わない=理解語彙であるか、使う=使用語彙であるか、は別にして。)

ところで、「俺」という字が書けない学生は、何をどう間違えているのだろう。日常的に接する文字では、似た字体の漢字としては、「庵」が思い浮かぶ(蕎麦屋の名称などでよく目にする。)

以前、京都の学生を対象に、「祇園」をどう書くかを、質問票で試したことがある。そのときのメインの課題は、「しめすへん」を「ネ」で書くか「示」で書くかであった。しかし、実際に回収して見てみると、旁の方を「氏」ではなく、「斤」に書いている学生が、少なからずいた。

たぶん、祇園=八坂神社=いのる=祈、というような連想の結果かもしれない。

だが、京都に住んだり通ったしていれば、「祇園」は、きわめて接触頻度の高い文字である。ちょうど、今日(16日)が宵山、明日(17日)が山鉾巡行、である。別に祇園祭のシーズンに限らず、日常的な京都市バスの行き先表示などで、多く使用されている。

接触頻度が高いからといって、正しく書けるとは限らない、このような事例になるであろう。

そもそも、(新)常用漢字表の適用の範囲が、公文書限定であれば、「俺」はいらない(であろう)。しかし、新聞などの表記にまで影響があるとするならば、必要になる。少なくとも、最近の世相からは、そう感じざるをえない。

「俺」が必要かどうかは、(新)常用漢字表の適用範囲と、ワンセットで考えなければならない。

そして、考えなければならないのは、通常の人間の記憶の範囲で、「書ける」漢字は、そう多くない。常用漢字をきめても、それ以外の漢字を記憶しなければならないとなると、記憶の容量の点から、常用漢字から排除してしまう字がでてくる。このあたりのことは、次に。

それよりも、ワークショップのパワポの準備をしないと。

また、ARGカフェの感想も書きたいが、後ほど。

當山日出夫(とうやまひでお)

新常用漢字:俺ではなく箸が問題2008-07-16

2008/07/16 當山日出夫

小熊さん、コメントありがとうございます。実際の生活で、「俺」を手書きで書く必要性というのは、どんな場面だろう……とは、思ってしまいます。まさか、ラブレターということはないでしょうが。

しかし、問題は、「俺」が入ったことではなく、「箸」が生き残ったこと。この字については、5月の日本語学会のシンポジウムで、安岡さんが、事例に出した字。

これを、実装フォントのレベルで解決するなら、さほど、問題は、おこらない。しかし、文字の規格に影響するとなると(JIS規格票の改訂)、世界の中での日本語の漢字を、どうかんがえているんだろう、委員会の人たちは、と思ってしまう。

シンポジウムの会場、いや、壇上にいたはずなのですが、何を聞いて理解したのか。

ともあれ、今週末、7月19日(土)、花園大学にて、1時30より、

ワークショップ:「文字-(新)常用漢字を問う-」

http://kura.hanazono.ac.jp/kanji/20080719.html

を、開催。すでに、安岡さんからは、きわめて大部な発表資料を送信してもらってある。(7メガもあるPDF)。この資料をもらいに来るだけでも、このワークショップの価値がある。タダです。(いや、他のみなさんの発表にも期待しています。)

それから、やはり興味深いのは、朝日新聞が、ネット版で、コード化して掲載したこと。5月の素案レベルのときは、画像データだった。字体はこれから決めるということで、強いて、画像にする必要性がないと判断したのだろう。

當山日出夫(とうやまひでお)