『妙心寺』展の図録:妙心寺の古文書のアーカイブズ2009-02-09

2009/02/09 當山日出夫

東京国立博物館に、福澤諭吉展を見に行くと、ついでに、妙心寺展もやっていたので、見てきた。などと書くとおこられそうであるが、まずは、立場として、慶應義塾の塾員(125期卒)であることを、優先。

妙心寺の展覧会の方であるが、私が、もっぱら興味を持ってみたのは、その照明。昨年の、「じんもんこん2008」で、木下史青さんの講演を聴いたばかり。この照明の光源は、いったいどこから来ているのか、天井ばかり見ていた。

ともあれ、展覧会そのものとは別に、図録が、きちんとしている。このごろは、どこの展覧会でも、単なる、展示品の写真集というよりも、解説が詳しく載っている。

今回の妙心寺の図録を見て、気づいた点がひとつ。

概論として、竹貫元勝先生の文章は、当然だろう。おどろいたのは、その次の各論の最初が、

「妙心寺の古文書」.羽田聡(京都国立博物館)

が掲載になっていること。内容は、妙心寺のアーカイブズについてである。ちなみにいえば、これ(妙心寺古文書)は、メインの展示品ではない。

通常なら、禅と日本美術、というようなタイトルの論文が来るところだろう。そこをあえて、このような論文の編集にしたのは、敬服する。(誰に対してかと言われても困るが、妙心寺、および、東京国立博物館に対して、ということになる。)

どのような宗教教団(この場合、妙心寺)であっても、その歴史にともなって、種々の記録・文書が必須である。そして、それを、どう保全してきたか、つまり、アーカイブズの問題が、ここにもある。これを使って、詳しく調べれば、妙心寺教団が、現在、これほどの規模を維持できている背景には、単なる狭義の信仰以外に、経済的・政治的なさまざまな要因がある、それについて、研究できるだろう。

この図録は、展示品の解説としてもよくできている。そして、その「妙心寺アーカイブズ」について言及した論文を、最初に持ってきた編集の方針も、(めだたないことかもしれないが)、きわめて高く評価したいと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

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