ARGカフェ(03)商業利用の是非をめぐって(補足)2009-02-23

2009/02/23 當山日出夫

さきに、「ARGカフェ(02)商業利用の是非をめぐって」として、書いたことに少し補足しておく。このメッセージで基本としているのは、パブリック・ドメイン(すでに、著作権が切れたもの)、についてである。

すでに、世の中に多くの、デジタルアーカイブ、がある、そして、その多くは、著作権がきれたもの。このとき、

・すでに著作権がなくなっている
・所蔵者の権利とは
・それをデジタル化した権利とは

これらについて、整理がなされていない。いや、まだ、論点としても、話題にのぼっていない。(私が知る限りでは、慶應DMCが、研究に着手したばかりといえるだろうか。だが、このDMCも、今年度で終了してしまう。)

図書館についていえば、すでに著作権が無くなってい書籍について、その新しい複製本を出版したいという、要求に対して、どう対応するのか、ということ。また、これが、すでに、当該の図書館などで、デジタルアーカイブとして公開されているような場合は、どうか。

昔の書籍を、復刻して、ISBNがついた状態で、再度、世の中に流通させることは、無意味であろうか。あるいは、それが、デジタル版(DVDなど)であってもいいかもしれない。

Googleブックスが、現実のものとなった今、まさに、上記のことがらについて、基礎的な問題提起も議論の蓄積もない、これが、日本の現状である。まもるべき著作権を保護しながらも、文化の継承・発展のためには、何をすべきか。この議論をふまえずには、学術資料のデジタル化も、そのネットでの利活用も、意味がなくなる。

くりかえしいう、「保存」という大義名分のもとに「死蔵」してはならない。それが、利活用され継承されてこそ、「保存」というべきである。

當山日出夫(とうやまひでお)

さらに付記
なぜ、このようなことを書くのかというと、2008年度(次年度も)映像学部で、「デジタルアーカイブ論」の授業を担当したから、ということもある。デジタルアーカイブをオンラインで公開する側は、それで「おわり」かもしれない。しかし、これから、新しい映像コンテンツを作っていく側の学生としては、それを、利活用(それも、多くは商業的に)できなければならない。すでに公開されたデジタルアーカイブは、「はじまり」(素材)である。この視点からみたとき、今の日本のMLAは、あまりに窮屈であると感じざるをえない。

さらにさらに追記
著作権をめぐっては、名和小太郎さんや、山田奨治さんの、仕事があることは承知している。だが、まだ、このような問題について、共通に議論しようというテーマにまでは達していない、と私は認識している。

コメント

_ 松田清 ― 2009-02-26 11時39分36秒

公共財としての文化資源(著作権切れの出版物)をデジタルライブラリーで公開するためには、出版物にかんする良質のコンテンツ(画像および書誌データ)を作成できる人材の育成と、産官学の協同による戦略的な施策、予算の裏付けが必要となると思います。google book searchのような商業利用を慶應義塾にならって、日本の私立大学が進めるのか。日本の(法人化した国立の)図書館・博物館はgoogle book search流の商業利用に対抗できるのか。問題は喫緊であり課題は大きいですね。京都大学附属図書館電子図書館で近代教育掛図(旧制三高および四高旧蔵)の画像公開を行った経験からすれば、商業利用(アメリカ型)か国家戦略(EU型)のいずれの方向を日本が取るのか、韓国や中国の現状と方向はどうか、といった問題ではないでしょうか。

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_ 読書日記 - 2009-02-23 23時35分23秒

 當山日出夫さんが「ARGカフェ(03)商業利用の是非をめぐって(補足)」で書かれている、著作権保護期間を満了し、パブリックドメインとなった著作物における「所蔵者の権利」と「デジタル化した〈引用者注:機関・人の?〉権利」の問題についてちょっと感想めいたことなど。  国の機関(直営)の場合、資料・史料は、国の財産であり、国の財産は何であれ、商用で利用する際には、何らかの対価を必要とする(国有財産の使