noriさんにこたえて「デジタルアーカイブズ」のこと2009-04-29

2009/04/29 當山日出夫

「アーカイブ」という言葉自体が、そもそも、日本語のなかで新しいことば。一般的な認識としては、「NHKアーカイブス」から浸透したということになる(通説)。

MLAでいうと、

M(ミュージアム、美術館・博物館)
これは、主に歴史的価値、文化的価値がある判断されるものを、コレクションし保存する、そして、展示公開する機関。基本は、それ一つしかないものが対象。

L(ライブラリ、図書館)
これは、書物という、出版社から刊行される、世の中に大量のコピーがあるものを収集して、公開(閲覧)に供する施設。たくさんの図書館が、同じ本を所蔵していても当然。

A(アーカイブ、あるいは、アーカイブズ)
日本語訳としては、一般に、文書館(ぶんしょかん/もんじょかん)。基本は、組織(公的な政府や地方自治体、また、企業など)が、その業務を遂行する過程で発生した文書(紙)を、保存し、後世に残すもの。全部を残すことはできないので、残すべきものを選ぶ、評価選別、というプロセスをともなう。重要なことは、今までの、アーカイブズの理論や方法論は、紙の文書を対象としていること。

というふうに理解するならば、デジタルコンテンツは、どの組織も、十分に対応できないことになる。すくなくとも、従来の、その施設の理念、対象となるモノのとりあつかいの方法論では、対応できない。

そのうえで、デジタルコンテンツをどう考えるか。収蔵品のデジタル化をどのようにすすめるべきか、種々の議論がある。

ほんの1~2年まで、アーカイブズ学の中核的な存在であった人は、世の中がデジタルになって、後世からは、記録の空白の時代、となるであろう、デジタルなど絶対に信用できない……という意味のことを、堂々と書いていた。(ちゃんと本になって、今でも、読める)。まあ、このあたり、日本のアーカイブズ学の歴史を、後の時代になってふりかえって見るとき、どう評価されるだろうか。

當山日出夫(とうやまひでお)