今週末は、アート・ドキュメンテーション学会2009-06-01

2009/06/01 當山日出夫

今週末、2009年6月5・6日、アート・ドキュメンテーション学会

まったく個人的な意見であるが、「デジタルアーカイブ」という用語は、いま、多方面で多様に使用されている。この語をどのような意味でつかうか、相互に、コミュニケーションがとれるようにすること、これが最大の課題かと思う。

なぜか、「授業」があったりして、全部の出席は無理かもしれないが、可能な限り参加の予定。

プログラムは次のとおり、

http://www.jads.org/news/2009/0605.html

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■主 催 アート・ドキュメンテーション学会、文部科学省グローバルCOEプログラム「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点」(立命館大学)

■場 所 立命館大学(衣笠キャンパス)国際平和ミュージアム内 中野記念ホール

■日 程 2009年6月5日(金)[第62回研究会]・6日(土)[第63回研究会][第49回見学会]

■参加費 JADS会員 無料、 日本文化DH拠点研究メンバー 無料、 一般 1,000円(学生 500円)

■懇親会会費 3000円程度

第1日 6月5日(金)

●13:15~17:10 シンポジウム 
○13:15~14:00 基調講演
赤間 亮(立命館大学大学院文学研究科教授・アートリサーチセンター長)
 「楽しめるWEBデータベースの創出-アート・コンテンツ・データベース(ACD)の時代へ-」
○14:00~16:00 事例研究   
14:00~「身装」 高橋晴子(大阪樟蔭女子大学)  
14:30~「文化資源と知識情報」 研谷紀夫(東京大学)  
15:00~「写真集・写真帖」村上清子(国立国会図書館)  
15:30~「歌舞伎」 赤間 亮(立命館大学)

○16:10~17:10 パネルディスカッション 

●17:10~17:30 第3回野上紘子記念アート・ドキュメンテーション学会賞・推進賞受賞式
●18:00~ 懇親会

第2日 6月6日(土)

9:30~ 研究発表会 受付開始
●セッション1 10:00~11:30
1. 人文系資料を対象とした大学図書館・大学博物館連携
   安達 匠(國學院大學図書館/筑波大学大学院)
2. リーフレットからみるミュージアムと来館者の関係
   増田ひろみ(駿河台大学大学院)
3. ミュージアム間の業務情報流通をめぐる課題と展望
   田良島 哲(東京国立博物館)

(11:30~13:30)ランチタイム

●11:30~12:30 アート・ドキュメンテーション学会総会
●見学 ※自由参加  堂本印象美術館、立命館大学国際平和ミュージアム 

●セッション2(特集「日本文化DH」)13:30~15:30
1. イタリア文化財デジタル化政策の動向報告及び在伊日本美術コレクション整理の現状と可能性
   齊藤ちせ(立命館大学大学院)
2. 「外地」日本語文学データベースの構築と課題-日本文学・文化研究における活用を目的として-
   楠井清文(立命館大学衣笠総合研究機構)
3. 在外日本陶磁器コレクションのデジタル・アーカイ ブについて
   前崎信也(立命館大学衣笠総合研究機構)
4. 立命館大学アート・リサーチセンター所蔵友禅図案の公開に向けた整理-本来のまとまりをいかに再現するか-
   岡本隆明(立命館大学衣笠総合研究機構)

(15:30~15:50)休憩

●セッション3 15:50~17:20
1.  ミュージアム・アーカイブズを考える
  筒井弥生(学習院大学大学院)
2. 動画活用におけるミュージアム情報デザイン事例報告
   山村真紀(慶應義塾大学DMC機構)
3. 創作バレエ作家佐多達枝の創作過程のドキュメンテーションとアーカイブ化
   中村美奈子(お茶の水女子大学)、 門 行人(舞踊評論家)

17:30 閉会

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當山日出夫(とうやまひでお)

『アーカイブズ学研究』10号2009-06-01

2009/06/01 當山日出夫

日本アーカイブズ学会の機関誌『アーカイブズ学研究』の第10号。

これは、特集として、

2008年度第1回研究集会
デジタル情報技術が拓くアーカイブズの可能性

となっている。

論文は、

平野宗明さん
アジア歴史資料センターから見たデジタル・アーカイブズの現在と展望

後藤真さん
「デジタル化」とアーカイブズ-”正倉院文書データベース”と近代史料のデジタル化を通して

これについてのコメントが、岡本真さん、近藤靖之さん。参加記が、東龍治さん。

その他、アーカイブズをめぐる動向、書評など。

ざっと読んで、注目すべき箇所。後藤さんの指摘、

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・デジタル化は保存問題を解決しない
・しかし、アーカイブズが活用されるためには不可欠であり、必ず行わなければならない。
p.42
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岡本さんのコメントにはこのようにある、

>>>>>
だが、「保存」という機能が「保存」という目的を必ずしも達成しないということは共通理解になっているだろうか。
p.46
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これに関連して、私が、このまえのアーカイブズ学会(学習院大学)、CH研究会(東京大学)で話したこと。「デジタル文字の保存の問題」、これが重要になるはずである。デジタル保存した文書データの文字の字体がいつのまにか変わってしまっている、ということが現に発生している。
0208→0213:04

このデジタル文字の保存のことについては、「明窓浄机」の方にも書く。

学会誌ではあるが、市販もしている。
岩田書院
http://www.iwata-shoin.co.jp/

當山日出夫(とうやまひでお)

追記:誌名を『アーカイブズ研究』→『アーカイブズ学研究』、訂正。

『ARG』377号の感想:データベースとアーカイブ2009-06-01

2009/06/01 當山日出夫

『ARG』の377号を見ての感想。

今回の号で気になったのは「データベース」と「アーカイブ」。この「ことば」をめぐっては、かねがね気になっていた。

◆国立教育政策研究所、研究成果アーカイブを公開

・研究成果アーカイブ
http://www.nier.go.jp/RSL_User_seika/RSL_OM_ChkLogin

ここを実際に見てみると、『ARG』で指摘とは別の問題点がある。

HPの名称は、「研究成果アーカイブ」とあり、そのトップが「データベース検索」とある。

かつて紹介されていた

・教育研究情報データベース
https://www.nier.go.jp/database/

ここでは、「データベース」の語を使っている。

で、もとにもどって、「研究成果アーカイブ」である。ここの説明(ヘルプ)には、次のようにある。

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研究成果アーカイブは、国立教育政策研究所で行われてきた調査・研究の成果をまとめた報告書をインターネットにより広く公開し、各方面で活用していただくことを目的とした検索システムです。
登録されている報告書等をキーワードや発行部署、発行年などにより検索が行えます。
<<<<<

私の感じる限りの感想であるが、どうも、「アーカイブ」と「データベース」の語が、混乱しているように思えてならない。

いろいろ言えるであろうが、私なりにざっくばらんに述べれば、
・アーカイブは、保存と秩序
・データベースは、検索と構造
となろうか(もちろん、異論はあると思う。)

「アーカイブ」ということばが多用されるようになってきているなかで、本来の「アーカイブズ」(意図的にこの表記)と、「データベース」、それから、「デジタルアーカイブ」、これらの関係を、整理する必要があると感じる。

なお、「研究成果アーカイブ」のHPからは、本家の国立教育政策研究所へたどれない。これは、問題。

當山日出夫(とうやまひでお)

『精神科医がものを書くとき』2009-06-02

2009/06/02 當山日出夫

中井久夫.『精神科医がものを書くとき』(ちくま学芸文庫).筑摩書房.2009

たまたま、ページをパラパラめくって目についた箇所、

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では実効を生む協力とは何か。一つは、お互いに知らない者同士では協力できないということです。協力しましょうと言っただけで真ん中が抜けていると、ここで落ちこぼれる患者さんは非常に気の毒であります。
もう一つは、電算機の父の一人と言われるノーバート・ウィーナーが言っていることですが、協力にあたっては、自分の領域についてはエキスパートであって、自分以外の領域については、ディスカッションできるだけの知識を持っていることが必要です。
(p.181)
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話題は、精神科での医療の問題である。しかし、ここで指摘されていることがらは、「フラット」なネット世界での、研究の協力のあり方について、示唆にとむ。

中井久夫の文章は、知的な気品がある。

當山日出夫(とうやまひでお)

『精神科医がものを書くとき』の「箴言知」2009-06-03

2009/06/03 當山日出夫

昨日から、『精神科医がものを書くとき』をひもといている。この本、冒頭の一節がいい。

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世界をできるだけ単純な公式に還元しようとする宇宙論や哲学あるいは数学と、キノコにはまだ未知の種類が数千種もあるという、世界の多様性に喜びを見出す博物学と、学問にも両極があることを知ったのは、学生時代であった。
(p.10)
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いわゆる、「文系」「理系」ではない、こういう考え方もある。ナルホド。で、私はどちらかといえば、もちろん、「博物学」の方。でも、言語を研究していても、前者のひともいる。文法論を専門とするひとたちである。

とはいいながら、「文字」というものを、なんとか、エレガントなモデルでとらえられないかとも思う。(このこころみは、ある。東京大学の白須さんの研究など。)

『精神科医がものを書くとき』、「論」として読むよりも、「箴言」として読む。その箴言の意味するとことは、とても奥深い。

文庫本の解説(斎藤環)につかってある「箴言知」、いい言葉だと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

『放浪記』2009-06-03

2009/06/03 當山日出夫

森光子の国民栄誉賞、というわけでもないが、本棚から、『放浪記』(林芙美子)をとりだしてきて、再読。いや、再々々々・・読、ぐらいになる。

確か、高校のときの国語の教科書にのっていた。

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その店先には、町を歩いている女とは正反対の、これは又不健康な女達が、尖った目をして歩いていた。
(p.11)
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「教科書」には、注がついていなかった。しかし、授業中に先生が、この女性は娼婦であると解説を加えてくれていたのを、記憶している。

林芙美子、その評価はいろいろだろう。まずは、『放浪記』の作者。近年では、『林芙美子と昭和』(川本三郎)、そして、ポストコロニアリズムからの林文子論。

とはいいながら、『放浪記』はいい作品である。たしかに、現在の価値観からすれば差別的な表現はたくさんあるのだが。私の手元にあるのは、新潮文庫、2002(平成14)年、第42刷(改版)。「現在の人権感覚では~~~」などの、注記はついていない。

余計なことだが、学校へ行けなかった子供達が普通であった時代。これは、そんなに昔のことではない。

當山日出夫(とうやまひでお)

『日々是修行』2009-06-04

2009/06/04 當山日出夫

佐々木閑.『日々是修行-現代人のための仏教-〇〇話-』(ちくま新書).筑摩書房.2009

この本、もろさんのブログで紹介されてている。
http://d.hatena.ne.jp/moroshigeki/20090510/p1

仏教とは、あまり関係のない話題になるが、重要な点。

>>>>>
では、「宗教の実体」とはなにか。それは、「運営」である。(中略)(1)その団体が、どういう手段で資金を調達し、それを何につかっているのか。そしてその明細をどの程度社会に開示しているか。
(p.123)
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※引用文中の「まるいち」は(1)に変更。

今の日本の宗教の教団のことはさておく。歴史的にみて、これを、実践してきている、教団がある。イエズス会である。

私が学生の時、直接その授業にでて、いまでも、「先生」と呼びたい人はすくない。が、そのなかの一人が、高瀬弘一郎先生。日本キリシタン史の研究である。

イエズス会は、16~17世紀の、東アジアでの、生糸貿易にかんする史料を、いまでも残している。そして、公開している。(高瀬先生によれば、イエズス会の活動をささえた資金源は、日本と中国との間の生糸貿易。信者による喜捨によるばかりではない。)

イエズス会が残した史料によれば、決して、日本や日本文化に対して、好意的であったとは言えない。しいていえば、宗教としては、都合の悪い史料になる。しかし、それでも、そのような史料を、アーカイブズとし、公開している。そして、その歴史は、過去、数百年にさかのぼって連続している。

ところで、思うこと。なぜ、「宗教」というのは、宗派・教団に分裂するのであろうか? 非常に素朴な疑問であるが、重要な点であると考える。

また、仏教は、超越者を認めない合理主義である、これは確かにそうかもしれない。だが、その歴史的な変遷の過程で、超越者を生み出してしまったがゆえに、宗教になった、という、逆説的な見方もできる。

合理的思想によってのみ、宗教は成立しうるか、という問いかけをもって読むべき本である、これが、とりあえずの読後感。

當山日出夫(とうやまひでお)

『活字印刷の文化史』2009-06-04

2009/06/04 當山日出夫

みなさん、遠慮なさっているかのごとくであるので、ここで記しておく。
※なお、この件は、「明窓浄机」の方にも記しておく。

張秀民(ほか)著.『活字印刷の文化史-きりしたん版・古活字版から新常用漢字表まで-』.勉誠出版.2009

目次は以下のとおり、

「中国印刷史家張秀民自伝」張秀民
「「きりしたん版」に「古活字版」のルーツを探る」大内田貞郎
「キリシタン版の文字と版式」豊島正之
「嵯峨本『伊勢物語』の活字と組版」鈴木広光
「日本語の連綿体活字」小宮山博史
「美華書館史考-開設と閉鎖・名所・所在地について-」宮坂弥代生
「明治初期の近代新聞が用いた木活字の特徴」佐賀一郎
「韓国最初の活版印刷による多言語『韓仏辞典』刊行とそのタイポグラフィ」劉賢国
「二〇世紀前半期における中国人による「倣宋体」と「楷書体」の開発」孫明遠
「築地体後期五号活字の出現時期と初期「アンチック」活字について」内田明
「印刷文字から符号化文字へ」小形克宏

勉誠出版
http://www.bensey.co.jp/

『活版印刷の文化史』
http://www.bensey.co.jp/book/2082.html

當山日出夫(とうやまひでお)

UCEEネット2009-06-04

2009/06/04 當山日出夫

以前に書いた記事にトラックバックをもらっているので、URLをここで、記しておく。

私の理解するところでは、産学連携による、あらたなネット利用の取り組みのひとつ。

UCEEネット
http://www.uceenet.org/index.html

紹介文は以下のとおり。

我が国では、科学技術創造立国の実現、産管学を問わないあらゆる分野での人材の育成が、急務とされています。

私たちは文部科学省特色ある大学教育支援プログラム平成16年度採択事業「コアリッションによる工学教育の相乗的改革」活動(国立8大学工学部長懇談会)の様々な活動の成果の集大成であるUCEE研究者データベースをもとに、人材育成・活用実現の一助とすべくNPO法人UCEEネットを設立いたしました。

学、産業界、社会で活躍されている多くの人たちの声をもとに、急速に進む高齢化に対応するために、様々な分野において活かせる人材を、大学を超えた学の連携、若手の海外派遣、協賛企業の募集、協賛企業へのインターンシップ等を進めていきます。

當山日出夫(とうやまひでお)

学生の出席調査2009-06-04

2009/06/04 當山日出夫

ひさしぶりに、我が家のよいこたち(黒ネコ、複数形)を、怒ってしまった。

学生の出席票を整理して、床のうえで、大カルタ取り大会状態をやっているところに来て、上を歩こうとするのである。せっかく整理した、出席カードが、グチャグチャになってしまうではないか。

ダメ! と、思わず、しかってしまった。

なぜか、うらめしそうな顔をして、こちらを見ていた。

どうして、大カルタ取り大会をやるはめになったか、「明窓浄机」の方にも書いた。いまどきの大学、いろいろと面倒見がよいのである。でも、教える方は、たいへんなのである。

http://d.hatena.ne.jp/YAMAMOMO/20090604/1244112295

當山日出夫(とうやまひでお)