エル・ライブラリー見学記2010-01-26

2010-01-26 當山日出夫

先日、2010年1月23日、JADS(アート・ドキュメンテーション学会)の関西地区の見学会が、エル・ライブラリーであった。(記録管理学会と合同)。そこで見たことの一端なりと記しておきたいと思う。

エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)
http://shaunkyo.jp/

見学会の趣旨は、MLA連携にある。学会(JADS)のHPから引用しておくと、

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エル・ライブラリーは労働資料に特化した専門図書館である。この図書館の特徴は、労働問題や労働運動に関する図書や雑誌のほか、労働組合の議事録など、労働運動を研究する際に重要となる文書類(アーカイブズ)や労働運動に関連する文化財までをも集めているところにある。最近、博物館(Museums)、図書館(Libraries)、文書館(Archives)の連携、融合が注目されているが、この図書館はまさにMLA融合型図書館といえ、その意味で非常に興味深い。

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まさに行ってみて、このことは実感できる。労働問題にかんする、図書資料と文書資料(史料)が、渾然とコレクションされている。規模は大きいとはいえないが、この意味においては、きわめて貴重な存在である。そして、「紙」にかぎらず、「モノ」も持っている。たとえば、労働運動の旗やハチマキなど、である。さらには、昔の工場での工具にいたるまで。

だが、それよりも、むしろ見るべきは、(自称)日本で一番ビンボーな図書館をどうやって維持運営しているか、である。現在の大阪府政によって、大幅に予算が削減されている。そのなかで、まさに、涙ぐましいとしか言いようのない経営努力の話しをいろいろ聞くことができた。

だが、その一方で、やはり、本来きちんと保存されるべき貴重な資料(史料)が、風前のともしび状態にあることに危惧も感じる。昔の労働運動のガリ版の文書・ビラなど、ほとんど酸性劣化の寸前の状態である。せいぜい、中性紙の箱に入れておくぐらいしかできていない。

これは、デジタル化して、つまり、スキャンして、デジタルアーカイブとして残すという方向もあるが、しかし、それ以前に、実物そのものを残す算段を考えなければならない。実物が無くなってデジタルデータだけ残っても、それでも無くなるよりマシではあるかもしれない、だが、本来は、実物そのものを残すことに業務の本来の姿があるべきだろう。せめて、現在の新しい紙にコピーして、それで保存・閲覧という方法もあるかもしれない。しかし、その予算がとれるかどうか。また、保管場所を確保できるかどうか。もう、書庫の満杯に近い状態。

日本で、ここにしかない貴重な労働問題の資料(史料)がある。これを、残し活用する方向に、どうして、行政はむかないのだろうか。ここは率直に、現在の大阪府政、また、大阪市政に対して、問題提起としたい。

労働問題、と狭く考えるよりも、むしろ、近現代の庶民生活誌の資料館という性格も持っている。ひとびとが、どのように暮らしてきたのか、これは、イコール、どのように働いてきたのか、の歴史でもある。その貴重な資料を残す工夫を考えたい。

當山日出夫(とうやまひでお)