『電子書籍の衝撃』2010-05-09

2010-05-09 當山日出夫

佐々木俊尚.『電子書籍の衝撃』.ディスカヴァー・トゥエンティワン.2010

http://www.d21.co.jp/modules/shop/product_info.php?products_id=746

この本については、すでに多くのブログ、Twitterなどで、言及されている。いまさら、私が付け足すこともないだろうと思うので、ちょっと普通とは違った視点から見てみる。

書籍が電子化する……これは、同時に、日本語の表記とメディアの変化でもある。この視点から見るとどうなるだろうか。

言うまでもなく、今、改定常用漢字表をめぐって、議論の最中、というよりほぼ最終段階にきている。この基本にあるのが、日本語のコンピュータ処理、手で書く文字から、打つ文字への変化である。では、このとき、いや、さかのぼって、改定常用漢字表の議論が開始されたときに、今のような電子書籍、具体的には、Kindle、iPad、などのことを、想定していただろうか。ワープロ(コンピュータ)の普及ぐらいの認識ではなかったか、といってもいいかもしれない。

確かに、コンピュータの普及による日本語への影響(特に、文字によるコミュニケーションと表記)は、大きなものがある。また、ケータイの広範囲な利用も視野にいれなければならない。だが、それを、決定づけるものがあるとすれば、その一つとして、電子書籍があってもいいはずである。というよりも、今になって、ようやく、その電子書籍が具体的なものとして、現実に姿を現したという段階にいるのだろう。

日常的に読み書きする日本語の文章に、電子書籍が入ってきたとき、というのを、改定常用漢字表は想定していただろうか。どうも、そのようには思えない。個人的な感想であるが、今後の、日本における電子書籍の方向によっては、日本語の読み・書くという環境が、さらに大きく変わる可能性がある。このことも、考えておかなければならないだろう。

電子書籍を視野にいれて、あまねく存在する「書き手」の存在を、どう考えるか。この視点なし、これからの日本語の表記は考えられないだろう。つまり、改定常用漢字表を決めても、そのときには、日本語のデジタル環境は大きく様変わりしてしまっている、ということである。

電子書籍を書物史・読書史の観点から見ることも必要であるが、視点をかえて、日本語の表記という点からも考えてみなければならないと思う次第である。

當山日出夫(とうやまひでお)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの名称の平仮名4文字を記入してください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://yamamomo.asablo.jp/blog/2010/05/09/5075023/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。