内村鑑三シンポジウムの意義2010-06-19

2010-06-19 當山日出夫

さて、これでようやく、7月3日の、DVD版内村鑑三全集刊行記念シンポジウムの関係者と、どうにか直接に連絡がとれた。なにせ、多方面にわたる発表者の会になるので、連絡をつけるのがとてもたいへん。

自分で企画しておいていうのもなんであるが、これはとても興味深いシンポジウムだと思っている。まず、なによりも、実際の製作にあたった印刷業(精興社)からの発表があること。

電子書籍になって、印刷業はいらなくなる、出版社は不要である、などの論が出てきている。これにも一理ないわけではない。たしかに、一部の著者(書き手)にとっては、自分で組版までして、オンラインで売ってということも可能である。しかし、これは、全体からみれば、ごく一部であり、いまは、そのごく一部の人たちの動きが目立っているだけのことだとおもうのである。

もうすこしたって、電子書籍が一般のものになったとき、それでも、従来の紙の本は残るであろう。また、電子書籍をつくるにも、単にデータの文章があればいいというものではなく、それをしかるべく編集して、電子書籍用に組版してという技術がもとめられる。

出版社の編集・企画の能力、印刷業の組版の技術、これは、電子出版になったからといって不要になるものではなく、むしろ、逆に、より重要性をますにちがない……これが、私の考えである。

この観点から見て、今回のシンポジウム。実際にデータを入力した出版会の方々、それに、それを使って研究してる研究者、それに加えて、現実にそれを製作した印刷業、これら立場の異なる人々が、あつまることになる。

このような企画はめずらしいのではないか、と思う。

世のなか、電子出版として、iPadか、Kindleか、という時代に、DVD版のPDFというのはいかにも時代遅れな印象があるように思えるかもしれない。しかし、DVD版の全集からは、自由に本文のPDFをとりだして使えるようになっている。実際には、iPadとも、Kindleとも、非常に近い関係にある企画なのである。

また、パッケージとしての全集、それを、個々のユーザレベルでどのように再編集して利用するかという問題もふくんでいる。DVD版内村鑑三全集から見えてくる電子出版の問題は、今後の問題点のあらゆる方向につながっていく。

もちろん、電子図書館のあり方を考える一つのきっかけにもなるだろう。

ぜひとも多くの人の参加に期待したい。

當山日出夫(とうやまひでお)