電子書籍とコピー2010-07-27

2010-07-27
當山日出夫

電子書籍についての議論があれこれとかまびすしい。そこから逃避したくなるほどであるが、そうもいかないので、こここは、アマノジャクな疑問をひとつ。

電子書籍というのは、コピーがどうなるのだろうか。コピーといっても、丸ごとコピーするのではない。たとえば、紙の本を読んでいて、必要だと思った箇所を、コピー機にかけて紙のコピーをとっておく、そのコピーである。

これが、昔なら、そこを写本したところであろうが、今は、コピー機がある。今は安い機種なら数万円。個人の書斎にあっても、おかしくない。

また、図書館であれば、(一定の制限はあるが)蔵書のコピーも可能である。いや、大学図書館などであれば、資料のコピーをとるために、学生がその蔵書をつかう、といってもよいかもしれない。いまでは、この、シンプルな、本のコピーということが、重要な、知的生産を支えるツールになっているといっても過言ではないだろう。

では、これが、電子書籍・電子図書館になったら、どうなるのか。コピー、ということはないから、プリントアウトということになるの。たとえば、iPadをプリンタにつないで、紙で保存してファイルしておきたいページをプリントアウトすることになるのか。

図書館だったらどうなるだろう。電子書籍のコピー(プリントアウト)は、どのような範囲で認められるのだろうか。

これまで、電子書籍について語ってきている人の多くは、出版関係者。純然たる読者、本を読む立場、あるいは、その本を読んでさらに何かをしようという人、そのような人の発言が、あまり聞こえて来なかったように思える。

しかし、本は読者とともにあってこそ本である。読者が何をもとめているのか、どんな本の読み方をするのか。その需要にこたえてこそ、電子書籍だろう。この意味で、単純素朴に考えて、現在の紙の本をコピーして資料を集めて、あるいは、それにペンで書き込みを入れて…という利用に、はたしてこたえるだけの用意があるのだろうか。

特に、大学図書館などでは、本のコピーができるかどうか…これは、非常に重要な論点であるはずである。さて、このあたりの議論は、いま、どうなっているのだろうか。

當山日出夫(とうやまひでお)

コメント

_ 永崎 ― 2010-07-30 10時32分35秒

むしろ気になっておりますのは、現今の著作権にまつわる制度は、
今のような容易に使えるコピー機を前提としておらず、それをうまく
制度の中に取り込めていないように思えるという点です。大学図書館に
よってはコピー機のまわりに色々注意書きを書いたり複製申請書様式を
置いたりしているところもありますが、実質野放しに近い状態のようにも
見えます。いわば、利用者の側が強くなりすぎている状況
であり、学術出版の電子書籍化がこの流れの延長線上にあると見ることも
可能であると考えるなら、これに対して、著作者・出版者の側の権利
保護体制をどう再構築していくかということは、コピー機普及以降の
継続的な課題と考えるべきかもしれません。

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