CH87(1)2010-08-01

2010-08-01 當山日出夫

人文科学とコンピュータ研究会(CH87、皇學館大学)まで行ってきた。その感想を少し。

朝7時ごろに家を出る。自動車である。京滋バイパスから新名神、伊勢道、というルートをナビが出したので、そのまましたがうことにする。途中、京滋バイパスが名神と合流するまでの間、瀬田東の付近、かなり渋滞。しかも、雨。いったい今日の天気はどうなるんだろうと思っていたが、名神から新名神を走るころには、天気は回復。目的地まで、途中に休憩をいれて、3時間弱ほど。ついたら、猛暑という感じ。しかし、場所が、伊勢神宮の近辺だけあって、京都や東京の夏の暑さとは、感覚がちがう。

ついて、まず、駐車場をさがす。なんとか、一台の空きスペースを見つけてとめる。で、目的の建物は……こういう場合、そこいらへんを歩いている学生さんに聞くのがてっとりばやい。たずねてみると、実に丁寧におしえてくれる。それに、すれ違う学生さんが、挨拶してくれる。

皇學館大学は初めてであるが、学生さんが礼儀正しく親切であるのは、やはりこの学校の建学の精神の故、教育方針なのであろう。(ちなみに、京都の、仏教系の某大学、もうすこし、学生の態度ふるまい、どうにかならんかねえ、と思ってしまう。余談。)

会場には、かなり早めについた。ちょうど受付を開始したところ。知った顔のひとがちらほら、という感じ。

キャンパス内も、また、校舎の中も、きれいに整頓されていて、う~ん、やっぱりちがうなあ、と感じるところがあった。今回の研究会、研究会そのものよりも、会場の大学に感心してしまうところの方が大きかったかもしれない。

そして、定刻になり、研究会である。

つづく(つもり)

當山日出夫(とうやまひでお)

CH87(2)2010-08-02

2010-08-02 當山日出夫

先月31に、皇學館大学(伊勢)であった、CH研究会のつづき。

最初は、小沢一雅さん。古事記崩年干支に関する数理的検討。

日本語史で、それも、いわゆる古代語(近代語に比して)の歴史的研究という分野にいながら、あまり古代史にも、また、考古学にも詳しいといえない。しかも、数学は不得手ときているから、さて、どう考えていいものか、わからないのが正直なところ。

ただ、この小沢さんの一連の、天皇の崩御年についての数理的研究には興味をもっている。おそらく、これまでの文献史学や考古学では生まれてこなかった、斬新な発想にもとづくものだと思う。この意味で、古代史や考古学の専門家が、どのように、小沢さんの研究を見ているのか、きいてみたいところである。

が、どうもCH研究会は、こういう斬新な研究が現れる一方で、その肝心の専門家がなかなか参加してくれないという、ある種の問題点をかかえているように思えなくもない。このあたりが、日本の人文情報学(デジタル・ヒューマニティーズ)のかかえている問題点のひとつであるのかと思う。

ついで、黒崎浩行さん、弓山達也さん、渡辺光一さん、らによる、
日米宗教思想の再構築-思想空間法を用いた体系化の一例
思想空間法-構造化手法と調査データを融合した思想・理念の体系化方法-
の発表。

思想(宗教)というものを、このように「機械的」にとりあつかってしまうことに、違和感を感じる人もいるだろうし、あるいは、斬新な興味を感じる人もいるだろう。このような研究の場合、ただ、工学的な手法を、思想研究にもちこんだというだけではなく、やはり、伝統的な旧来の思想史研究者を納得させるだけの力量が必要になると思う。あえて批判的に見ればであるが、この意味では、非常に面白いのだが、さて、では、普通の宗教学者はどのようにこの発表を聞くのかというあたりが気になるところ。

私個人としては、基本的に、このような斬新な発想に対して常に柔軟な姿勢でありたいと思っている。そのうえで、より、説得力のある研究に発展するにはどうあるべきかを考えてみたい。自分の予備知識のなさであまり良く理解できていない面があるかと思うが、非常に興味深い発表であったと思う。是非、この続きの発表を、いつか聞いてみたいものである。

當山日出夫(とうやまひでお)

『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』2010-08-03

2010-08-03 當山日出夫

中西秀彦.『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』.印刷学会出版部.2010

いろいろいそがしくて読んでいる時間がないのであるが、今日は、とりあえずタイトルだけの紹介。『ブックビジネス2.0』と一緒に読みたい本である。CH研究会のつづきは明日にでも。

當山日出夫(とうやまひでお)

CH87(3)2010-08-04

2010-08-04 當山日出夫

CH研究会の感想のつづきである。

竹田陽子さん、丸茂美恵子さん
情報技術支援によるフィードバック・ループの効果

要するに・・・MC(モーションキャプチャ)を使って、日本舞踊の学習にどのような効果があるか、ということの研究と理解した。MCについては、いろいろ研究会で発表をきくのだが、最近の傾向としては、自分の(あるいは他人の)動作をMCでとってみて、その画像を見て、自分自身の、たとえば舞踊などの学習にどのように影響・学習効果があるか、という方向からの研究発表が増えてきているような気がする。

これが以前であれば、ただ、人間の身体動作の測定、ということに主眼があったように思う。それが、MCという技術によって、自分の動作を客観的に計測してみて、そこから何を学びうるのか、何がわかるのか、という方向に変わってきているようである。

こういう話し、たしか、NHKの番組で、京都の職人の技の伝承をテーマに番組があったように記憶する。熟達した師匠と、若い弟子とで、どのように動作が違うか、機械的に測定してみる。そのことによって、技の伝承を、より効果的なものにしようというもの。

これら全体をとおして、やはり、MC技術と人間のかかわりにおいて、ちょうど転換点にきている。あるいは、それだけ、MC技術が進歩したということなのかもしれない。また、人間の側としても、自分自身の身体動作のコンピュータによる計測ということに、違和感を感じなくなっているということもあるだろう。

人間の感性とコンピュータとの関係において、面白い傾向だと思う。

浅水悠子さん、上村龍太郎さん
情報理論を応用したSOMによるメディアミックス作品と原作の作品分析

正直言って前半の理論的部分はよくわからない。(理工系で専門的すぎて)。ただ、後半の実際の作品の分析になると、なかなか面白かった。題材として、『地底探検』がとりあげられていた。その様々な映画化などにおいて、どのように、原作から離れ、あるいは、忠実であるのか、それを可視化して見せる。これは面白い。

ただ、あつかった素材が、『地底探検』であるのが、どうかな・・・という気がしなくもない。もうちょっと、いい題材がなかったか。また、この手法、日本の古典作品、特に、中世の御伽草子などにも応用がききそうである(このあたりのことは、質疑のときにも、フロアから指摘があったが。)

やはりこの種の研究は、基本となるアイデアの良さも必要だが、同時に、具体的にどの作品をあつかってみるか、というところで、非常に大きく説得力の違いが出るように思う。研究のチームが、良いパートナーを見つけられるか、逆に言えば、文学研究のような分野からいかに積極的にかかわっていくか、ということが、これからの課題ではないだろうか。

當山日出夫(とうやまひでお)

CH87(4)2010-08-05

2010-08-05 當山日出夫

田島孝治さん、高田智和さん
「景観文字調査」のための調査結果分類方法に関する一考察

この発表は、私もすこし関係がある。景観文字・・・看板や道路標識などで見る文字である。それを言語研究資料として、いかに利用するかという研究。いや、研究というよりも、そのための方法論。というよりも、そのための、道具(ツール)の話し。

最終的には、人間の目による確認が大事かなとは思う。そして、重要なことは、ある箇所に、その文字が無いということも記録しておく必要がある、ということ。これは、今後の景観文字調査の方法の一つとして、重要な点になると思う。あるいは、ある範囲を悉皆的に調査したのなら、その範囲を明示的にはっきりと示す工夫が必要かもしれない。

デジタルカメラにGPS機能がつかえるようになって便利になったものである。とはいえ、今のところ、一般的には、とれるのは、カメラの位置情報である。撮影の方向や、被写体との距離などは、とれない。景観文字調査にとっては、カメラのある場所ではなく、看板のある場所の情報の方が必要である。実際に調査してみると経験するが、道路の反対側からでないと見えない看板というものがある。

まだまだ、工夫改良の余地のある研究課題であるが、なるべく協力していこうと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

電子書籍関係の本2010-08-06

2010-08-06 當山日出夫

読んだ本、まだの本もあるけど、いま、てもとにある電子書籍関係の本で、めぼしいものをあげておく。順不同。

『ブックビジネス2.0』.岡本真・仲俣暁生(編著).実業之日本社.2010

『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』.中西秀彦.印刷学会出版部.2010

『電子書籍の真実』.村瀬拓男.毎日コミュニケーションズ.2010

『電子書籍と出版』.高島利行(ほか).ポット出版.2010

『電子書籍の構図』.上村八潮.印刷学会出版部.2010

『電子書籍元年』.田代真人.インプレスジャパン.2010

『電子書籍を読む!』(『ユリイカ』2010年8月号).青土社.2010

こうしてみると……電子書籍を読むよりも、電子書籍について書いた紙の本をたくさん読んでいるような気がする。

CH研究会のつづきは明日。

當山日出夫(とうやまひでお)

CH87(5)2010-08-07

2010-08-07 當山日出夫

松田訓典さん、彌永信美さん、永崎研宣さん、下田正弘さん
フランス語仏教辞典『法寶義林』目録のデジタル化とその課題-TEIガイドラインの適用を通して-

この発表、二つの観点から見ることができるだろう。

一つは、額面通りに『法寶義林』のデジタル化の課題として見る。もう一つは、TEIの応用事例として見る視点。私の場合、どちらかといえば、後者、つまりTEIの具体的な活用事例の報告としてきいていた。

おもいおこせば、何年前になるか……TEIが、日本にはじめて紹介されようとしたとき、まだ、パソコンの黎明期であるが……すこしだけだが、かかわったことがある。

その時の議論はいろいろあった。たとえば、そもそも、テキストをマークアップするとはという話しもあれば、はたして、(日本語の)テキストをマークアップ可能であるのか、というようなことまで。

研究会の質疑のときにも、やはり、この点について質問があった。なぜ、TEIであるのか。その必然性はどこにあるのか。

この問いかけはそれなりに意味はみとめられる。しかし、今、日本において必要なのは、TEIの普及啓蒙ではないだろうか。これが言い過ぎなら、もう少し、TEIについて知られていてもよい。今、TEIについて、日本語ではほとんど情報がない状態がつづいている。これは、なんとかする必要があるだろう。

とはいえ、実際にTEIが日本でなじみのあるものになるには、かなり厳しいかなと感じないではない。このことを理解したうえで、意欲的な発表であったと思う次第である。

當山日出夫(とうやまひでお)

CH87(6)2010-08-08

2010-08-08 當山日出夫

守岡知彦さん
CHISEのセマンティックWiki化の試み

CHISEによる文字組成、これを、Wikiで記述するには……という発表なのであるが、なんとなくわかるような、わからないような。

文字(特に漢字)についての知識をWikiでとなった場合、どのようになるのだろうか。具体的イメージが、いまひとつつかめない、というのが正直なところ。これは、質疑で私が質問したことにもなる。つまり、Wikiによる「版」の管理という機能と、文字についての考え方の違い、これは、どのようにシステムのなかに存在することになるのだろうか。

とはいえ、実際に稼働したとしても、現実にアクセスして何かしようとするような人は、もうすでにお互いの素性を知っているような世界だから、特にどうということもないか……というのも、みもふたもないが、一番の正解かもしれないと思ったりもする。

文字というごく身近にあるものでありながら、それについてきちんとした説明をしようと思うと、困るものもない。まあ、言語学一般がそうだともいえる。その中で、日本における文字研究のあり方もまた問題であるとは思うのだが。などと書いているうちに、そろそろ、8月11日、文字研究会のワークショップが近づいてきた。

特に何をする役目というわけではないが、ともあれ、CH研究会のつぎは、文字研究会になる、ということで、夏休みが過ぎていく。

當山日出夫(とうやまひでお)

『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』2010-08-09

2010-08-09 當山日出夫

中西秀彦.『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』.印刷学会出版部.2010

やっと読んだ。で、感想はといえば、タイトルとはちょっと違うな……といったところか。「抵抗勢力」ではなく、「羅針盤」「舵取り」かもしれない。

これまで、各方面から、電子書籍については語られてきている。そのうちで、印刷業の立場から、電子書籍について語ったものとして読む。私自身、DVD版内村鑑三全集にかかわったせいもあって、実際に製作にあたった精興社のひとと話す機会が幾度かあった。そのとき感じたのは、電子書籍といっても、立場……出版社からか、印刷業からか、で、いろいろと、考え方が変わるものであるということ。印刷業には、それなりの考え方がある。

たとえば、本書から、一箇所だけ引用するならば、

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かといって印刷業界人としては出版社と心中するのもあまりうれしくはない。

だからまずは主張すべきは主張させてもらう。印刷したら、当然のようにその原版PDFを要求され、泣く泣く渡すと、それがなんの断りもなく電子書籍として使われているなどというはやはりやってほしくない。

pp.22-23

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まさに、印刷業からの主張である。しかし、電子書籍を否定してはいない。そうなるべき必然性をきちんとふまえて、この本は書かれている。どのような方向で、電子書籍が普及することがのぞましいのか、その俯瞰図を模索しているように思える。

ところで、この著者の会社、中西印刷であるが、この会社のHPを見て、あることに気づいた。中西印刷という会社、学会の事務の代行業務もやっている。言語学会の他に、自然科学系の学会が多いのは、この印刷会社としての営業の反映でもあるのだろう。

ここでふと気になった。いま、情報処理学会は、完全ペーパーレスの方向をめざしている。他の学会はどうなのだろう。いわゆる「学会誌」という紙の媒体は残る方向であるのだろうか。もし、残るとすれば/消えるとすれば、それはどのような理由によってであろうか。

電子書籍の普及の流れの中にある学会誌についても、何か、著者の思うところがあればききたいと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

アート・アーカイヴが掲載になった2010-08-10

2010-08-10 當山日出夫

6月にあった、アート・ドキュメンテーション学会の年次大会。その時のシンポジウムの取材記事が、ようやく掲載になった。

ニッシャ印刷文化振興財団
AMeeT
http://www.ameet.jp/

http://www.ameet.jp/digital-archives/digital-archives_20100810-2/#page_tabs=0

とにかく、まんべんなくまとめるように書いたつもりなので、どんな感じのシンポジウムであったかは、ざっと見て理解していただけることと思う。いずれ、これは、きちんとした冊子体のものが出る予定(書いて、しまっていいのかな、まあ、いいか)である。あくまでも、私個人の視点から見ての報告と思っていただければと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)