『ネット・バカ』2010-08-24

2010-08-24 當山日出夫

まだ、読み始めたばかりの本。

ニコラス・G・カー,篠儀直子訳.『ネット・バカ』.青土社.2010

サブタイトルには、「インターネットがわたしたちの脳にしていること」とある。読み始めたばかりなのであるが、なぜか、この本には、共感して読んでしまうところがあると感じる。それは、著者のコンピュータやインターネット利用の経歴と、自分自身のそれとが、かなり重なるせいであろう。著者の紹介を見ると、私とさほどちがわない。

アメリカと日本という違いがあるにしても、コンピュータ(パソコン)とインターネットの、以前と以後を経験して成長してきた人間には、共通して感じるものがあるのかもしれない。

ところで、いま、日本では、電子書籍がある意味でブームになっている。コンテンツがどんどん出てきているという状況ではない。それ以前に、電子書籍で今後の日本の出版や図書館はどうなるのか、こういった方面からの関心が非常に高い。

「メディアはメッセージ」という。であるならば、紙の書籍が、デジタル書籍になることは、そこでなにがしかのメッセージの変化をともなうはずである。だが、そのことについて、あまり深く考察した電子書籍論は、まだ、日本では出ていないように思われる。

おそらくは、次の世代までまたなければならないのかもしれない。生まれてから最初に読んだ本が、デジタル版であり、そこで成長して、コンテンツ制作者になる、そんな人間が当たり前になる時代……それには、これから、一世代かかるだろう。そうなったとき、過去(つまり今)をふりかえって、電子書籍とはなんであるのか、本当に理解できるのだろう。

ともあれ、紙の書籍の時代から、インターネットの時代になって、まさに「メディアはメッセージ」であることを実感してきた人間としては、この本は興味がある。詳しい読後感などは、おってのことにしたい。まずは、簡単な紹介だけ。

ついでにいうならば、私は、iPhoneはもっていない。また、ノートパソコンは持っていても、外に出て無線LAN通信はしない。これは、せめて、外に出たときぐらいは、Webから解放されたいという、ささやかな、きわめて個人的な抵抗のかたちでもある。(まあ、半分は、ものぐさであるということもあるのだろうが。)

當山日出夫(とうやまひでお)