宮下志朗『カラー版書物の歴史への扉』2016-05-31

2016-05-31 當山日出夫

本は好きな方である。そして、本についての本も好きである。これは、本好きの人間にとっては、魅力的な本である。

『図書』、これは言うまでもなく岩波書店の広報誌である。その図書の表紙を飾った書物について、カラー版として再編集して、一冊にまとめたもの。2008年から2014までのものがまとめてある。

宮下志朗.『カラー版書物の歴史への扉』.岩波書店.2016
https://www.iwanami.co.jp/book/b243776.html

著者(宮下志朗)は、ルネサンス文学の研究者・翻訳者。みずから「どうしてもその時期の書物に偏りがちになる」としながらも、近現代の書物にまで、幅広くその目はおよんでいる。

と言っても、やはり西洋の書物が中心である。だが、見ると、中には日本の本もいれてある。

鈴木信太郎・渡辺一夫訳『サン・ヌゥヴェル・ヌゥヴェル――ふらんす百綺譚』
1949年、東京、洛陽書院刊

もあれば、

江戸川乱歩『押絵と旅する男』フランス語版
カリーヌ・シュノー訳、2000年、アルル、フィリップ・ビキエ刊

のような本もとりあげられている。

各本について、一ページの解説がついている。宮下志朗の本である。ただ、その本について言及するだけではなく、その周辺の出版史は無論のこと、文化史・社会史にまで、ひろく目配りの聞いた記述である。

このような本、どこからともなく、適当にページを開いて見るのが楽しい。(本自体は、全体として、テーマ別に編集してあるのだが。)

なお、上記の記事、とりあげてある書物の書誌の記載方法については、この本の方式にしたがって書いておいた。

追記 2017-05-29
ここでとりあげた本の出版社HPのURLを更新。