電子書籍からの引用はどう示すか2016-06-24

2016-06-24 當山日出夫

電子書籍について思うことを書いてみる。

電子書籍の利便性については、いろんなところでいろんなひとが述べている。ここでくりかえすまでのこともないだろう。ここでは、私が困っていることについてしるしておきたい。

それは、「引用」と「典拠」のしめしかたである。

論文やレポートを書く。そのときに、引用・出典ということが重要になる。これは、紙の本についてであれば問題はない。さまざまな流儀があるとはいえ、これまでの各研究分野における、習慣というか、伝統的なスタイル、とでもいうべきものがある。

これが、電子書籍になるとどうか。

引用はできる。PCで見ているにせよ、Kindleなどの専用デバイスで見ているにせよ、とにかく、内容を書き写す(コピー)することは、紙の本と同様である。

では、次に、この出典を注記しようとしたとき、どうすればいいか。このときになって、はたと困ってしまうのである。ページが書けないのである。

いうまでもないことだが、電子書籍には「ページ」の物理的概念がない。本文のデータがあって、それをディスプレイに表示する。そのとき、文字の大きさにあわせて、ディスプレイの表示文字数は変化する。リフローするのである。引用して、その典拠・出典としての、どの本の何ページと、確定的に指示できないのである。

これは、論文・レポートを書くとき、致命的に困ることだと思うのだが、はたして、ひとはどう思っているのだろうか。

たとえば、私のKindleには、「角川インターネット講座」(全15巻、合本版)がいれてある。(安かったから買ったのだが、今、確認してみると、値段があがっている。買ったときの値段を確認してみると、2700円だった。)

ともあれ、この本から何か引用しようとしたとき、本文をディスプレイ表示を見ながら書き写すのはいいとしても、その典拠・出典を書かねばならなくなったとき、困ってしまう。ページ番号が書けないのである。これでは、引用することができない。これでは、私が書く文章……論文とまではいわなくても、このようなブログに引用することもできない(少なくとも、典拠を明示して書こうとするならば。)

引用できないということは、学生の勉強につかえない、少なくとも、論文やレポートを書くときの参考文献としては利用できない、ということになる。論文やレポートでは、引用した箇所については、かならずその典拠をしめさなければならない。これは、アカデミックな世界における決まったルールである。そして、しめされた典拠にしたがって、その論は検証できなければならない。

電子書籍の利便性について語られることは多いが、上記のような問題点については、あまり言及されることがないように見ている。はたして、この問題、どのように考えればいいのだろうか。