近代における「天皇」の呼称2016-10-02

2016-10-02 當山日出夫

近代になってから、天皇はなんとよばれていたのか。「大日本帝国憲法」(明治22年)には、「天皇」とことばがつかってあるから、その頃からに決まっている。このように思うこともできる。

ところが、明治には、「皇帝」のことばもつかっている。たとえば、

日清戦争の講和条約。
ここでは、「大日本国皇帝陛下」と「皇帝」のことばがつかってある。

国立公文書館 アジア歴史資料センター デジタルアーカイブ
アジ歴トピックス 日清戦争
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F0000000000000016162

これが、日露戦争のポーツマス条約になると「日本国皇帝陛下」になっている。
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F0000000000000020556

さて、昭和11年に「大日本帝国」と決まったことに関連して、同じ時期の他の資料をみると、「天皇」に決まったことがわかる。防衛省の資料にある。

我国国号及元首御称呼に関する件
レファレンスコード C01005962200
陸軍省-大日記甲輯-S11-1-14

一第一二八四号 4月23日 条一機密合第一五〇三号 昭和11年4月20日 外務次官 堀内謙介 陸軍次官 梅津美治郎殿 我国国号及元首御稱呼ニ関スル件 今般当省ニ於テハ国際条約等ニ記載セラルル我国国号及我国元首ノ御稱呼ニ関シ左記ノ通決定シ之ヲ夫々「大日本帝国」及「天皇」ト統一スルコトトセルニ付此段申進ス 記 一、国号 (イ)条約ノ前文 (ロ)条約ノ末尾ニ於ケル署名者ノ「タイトル」ノ如ク嚴格ナル形式ヲ用フヘキ箇所ニ於テハ憲法第一条ノ通之ヲ「大日本帝国」トシ 二、御稱呼ハ凡ユル場合ニ從来ノ「皇帝」ニ代フルニ「天皇」ヲ以テス 三、左記ノ文書其ノ他御信任状奉呈ノ際ニ於ケル言上書等之ニ準スヘキ文書ニ於テモ亦同様トス

これをみると、軍の文書類において、「天皇」にきまったのも、同じく昭和11年4月のことであったことがわかる。近代における天皇の呼称というのも、意外と新しい面があることになる。

ともあれ、デジタルアーカイブでこんなことが、簡単に調べられるようになったというのは、便利な世の中になったものだと思う。

なお、グーグルで、昨日書いたことを検索してみると、次の論文がヒットした。

長谷川伸.「昭和初期国号及び元首の称号統一に関する一考察」.『法政史学』44.1992
URI
http://hdl.handle.net/10114/10419

何事も、自分で文章を書いてみるものである。そして、それを検索してみる。すると、思いがけない論文に行き当たる(こともある)。

追記 2016-10-06
このつづきは、
昭和11年の「大日本帝国」の史料について
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/10/06/8215858