日本の南進政策の理由2016-10-05

2016-10-05 當山日出夫

『荷風さんの昭和』から、つづける。

半藤一利.『荷風さんの昭和』(ちくま文庫).筑摩書房.2012 (原著、『荷風さんと「昭和」を歩く』.1994.プレジデント社 文藝春秋.『永井荷風と昭和』(文春文庫).2000.文藝春秋)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480429414/

やまもも書斎記 2016年9月26日
半藤一利『荷風さんの昭和』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/09/26/8201755

このブログでもふれた、戦前の南進政策について、「歴史探偵」は、つぎのように指摘している。

「アジアの諸国を植民地化していたフランス、オランダ、ポルトガルの本国がドイツ軍によって席巻された。いってみれば家主が破産したのである。アジア植民地の財産はだれの手に。ドイツにすべて領有されてはたまらない。日本も東南アジアには発言権があるはずであるゆえに、一刻も早く地歩をそこに固めなければならない。(中略)急速に「南方」が浮かび上がってきた。」(p.266)

とあるあたりは、さすがというべきであろう。それを歴史家の目で、史料の裏付けをとって論じているのが、加藤陽子の『戦争まで-歴史を決めた交渉と日本の失敗-』といってもよい。

やまもも書斎記 2016年9月12日
加藤陽子『戦争まで-歴史を決めた交渉と日本の失敗-』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/09/12/8182853

半藤一利の著書は、それを直接に歴史の史料としてつかうことは問題があるかもしれないが、昭和という時代を見る歴史家としての眼はたしかなものがあると思う。「歴史探偵」を自称しているからといって、軽く見てはいけない。

だが、気楽に読める本であるし、気楽に読めばいいのだとは思うが。しかし、歴史研究をこころざす人にとっては、様々なヒントを与えてくれる本だと思う。