山田風太郎『風山房風呂焚き唄』2016-10-23

2016-10-23 當山日出夫

山田風太郎.『風山房風呂焚き唄』(ちくま文庫).筑摩書房.2016 (原著、筑摩書房.2008)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480433787/

風山房とは、山田風太郎が信州にたてた別荘の名。そこでの身辺雑記を中心に構成したエッセイ集。

その中の「読書ノート」のところには、次の文章が収められている。

「人生の本――「漱石書簡集」」
「私の愛読書――「漱石書簡集」」

私は、漱石全集は、2セット持っているのだが、はっきり言って書簡の巻を丁寧に読むということがなかった。これは、読んでみなければと思った。

漱石の書簡の面白さには、森まゆみもふれている。これについては、すでに書いた。

やまもも書斎記 2016年10月20日
森まゆみ『千駄木の漱石』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/10/20/8232630

ところで、山田風太郎……私にとっては、明治伝奇小説がなじみ深い。今でこそ、その一連の作品は高く評価されているが、書かれたころはそうでもなかった。ほとんどの作品は、単行本が出たときに買って読んできている。

この意味では、次のような箇所は興味深い。

「「大史実」の変更は許されないが「小史実」なら許される、といっていいかも知れない。何にしても、小説上の故意の嘘は、たとえ歴史上の事実や実在人物を扱ったものであっても、基本的には許されるのじゃなかろうか、というのが私の意見である。」(pp.254-255)

山田風太郎の明治伝奇小説、時間ができたら、じっくりと読み直してみたいものであると思っている。いまでは、ちくま文庫で、山田風太郎明治小説全集がそろっているし。

それから、こんど岩波で出す新しい漱石全集、買うことにしようかなと思っている。(半分は、税金のようなものとあきらめて。)