北原白秋『白秋詩抄』『白秋抒情詩抄』2016-11-26

2016-11-26 當山日出夫

手放したことはない本のはずだが、さすがに、古い文庫本を探し出すのはむずかしい。これは、古本で買ってみた。格安だった。

北原白秋.『白秋詩抄』(岩波文庫).岩波書店.1933.1978改版
https://www.iwanami.co.jp/book/b249182.html

北原白秋.『白秋抒情詩抄』(岩波文庫).岩波書店.1933.1978改版
https://www.iwanami.co.jp/book/b249183.html

岩波書店のHPには、まだ掲載されているが、もう今では売っていない本のようだ。北原白秋の詩というのは、今では読まれないということだったのだろうか。

古書で買い直して改めて読んでみて、気のついたことは、次の二点。

第一に、これら二冊の岩波文庫の白秋の詩集が、1933(昭和8)年の刊行であること。白秋は、昭和17年になくなっている。つまり、白秋の生前の編集になっていることである。

その目でみると、たとえば、『白秋詩抄』は、

「海豹と雲」抄
「水墨集」抄
「白金之独楽」抄
「畑の祭」抄
「雪と花火」抄
「邪宗門」抄

の順に編集してある。つまり、作品の発表順ではない。逆順。

そして、『白秋詩抄』の「解説」(吉田一穂)には、次のようにある。

「初版詩集の底本と全集その他の校合に際して生ずる異同や錯落も、ここに採録された詩編に関するかぎりは、重版ごとに白秋自ら再三、校訂の目を通して決定稿を成したものであるから、その憂いも消え、むしろ本書こそ基準たるべき正版であると信じる。」(p.195)

近代文学における本文校訂の難しさという点はふまえるにせよ、白秋の生前の刊行で、自らが手をくわえて校訂にあたったという意味では、この岩波文庫版は、それなりに価値のあるものとすべきであろう。

第二に、これは、個人的な感想というべきものだが、「空に真赤な」がはいっていない。『白秋抒情詩抄』にもない。

やまもも書斎記 2016年11月20日
北原白秋「空に真赤な雲のいろ」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/11/20/8256552

はて、私は、何を見て、この詩をおぼえていたのだろうか。あるいは、中央公論社の「日本の詩歌」か。この「日本の詩歌」のシリーズは、私が、高校生・大学生のころは、まだ売っていた本である。

これは見つかるかもしれない。探してみようか。(古書で買うとしても、これも、いまでは格安で買えるが。)

以上の二点が、とりあえず、古書で『白秋詩抄』『白秋抒情詩抄』を手にして、気づいたところである。

私は、この文庫本の古い版で白秋を読んだと憶えている。古い活字だったという記憶がある。まだ、私の高校生のころはには、北原白秋は、現役で読まれる詩人であった、ということになる。

それが、いまでは、もう忘れ去られようとしている。文庫版の筑摩書房の「ちくま日本文学」には、萩原朔太郎はあるが、北原白秋は、はいっていない。

だが、日本の近代詩の歴史のなかで、やはり北原白秋ははずすことはできないと思う。そのことばの魅力、いや、魔力とでもいった方がいいだろうか、一度読むと強く印象にのこる。白秋を出発点としないでは、近代の日本の詩を語ることはできないと感じる。(もちろん、日本近代の詩歌の歴史は、もっとさかのぼって考えるべきだとは思うのであるが。)

ともあれ、今では、北原白秋が読まれなくなっているということは、日本語の感性がどかかで変質しつつあるということなのかもしれない。まあ、私のとしになって思うこととしては、北原白秋の作品は、まだ、若い人に読んでおいてもらいたいものだと思うのであるが。

追記
上記の文章を書いてから、本を探してみた。中央公論社の「日本の詩歌」、何冊か買っていて、残っていた。なかに「北原白秋」の巻もあった。私が、「空に真赤な雲のいろ」を憶えていたのは、この本を読んでいたからだと確認した次第である。

追記 2018-11-26
岩波書店HPへのリンクを訂正。

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