桜木紫乃『風葬』2016-12-15

201-12-15 當山日出夫

桜木紫乃.『風葬』(文春文庫).文藝春秋.2016 (原著 文藝春秋.2008)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167907464

新しく文庫版で出た作品であるので、さっそく読んでみた。

そうたいした分量のある作品ではないのだが、途中に一日の中断がはいって、読み終えた。結論からすると、よく分からなかった……というのが、正直なところ。ミステリーとして書いてあるのだけれども、いったい何が謎の核心なのか、その解明はどうなのか、はっきりしない作品である。(やはりこの作品は、いっきに読むべきであったか。)

とはいえ、桜木紫乃の北海道を舞台にした作品として、そのテイストを愉しむには十分なできばえであるといえよう。

「九月、久しぶりに訪れた釧路の街は既に秋風が吹いていた、海辺の街特有の、抜けるように高く青々とした空の下、勇作はアクセルを踏んだ。」(p.72)

「秋風吹く釧路の空は、霧で曇りがち夏を取り戻すためなのか色が濃い。住んでいた頃は少しもありがたいと思わずにいた秋空を振り仰ぐ。絵の具をどう調合しても描くのは難しいと言われる道東の空が、鮮やかで温かな寒色を横たえてどこまでも広がっていた。」(p.152)

この作品も、北海道、その釧路あたりの空の描写が特徴的である。

ただ、作品としてみた場合、いろんな要素……いじめ、密漁、殺人、出生の秘密、老いの孤独、などなど……さまざまなものが、一緒になって凝縮されている。これだけの要素を一つの作品のなかにまとめるのは、いささか無理があったのではないか、という印象をもつ。たしかにこれらのテーマは、桜木紫乃の描く重要なテーマだろうとは思うのだが。

これまで読んだ桜木紫乃の作品としては、『氷平線』『ラブレス』『ホテルローヤル』がいい。現代を描いている作家として、桜木紫乃の作品は、これからも読んでおきたいものとしてある。

次に読んで、書こうと思って用意してあるのは『硝子の葦』(新潮文庫)。それから、『起終点駅(ターミナル)』(小学館文庫)。