NHK『花嵐の剣士』2017-01-16

2017-01-16 當山日出夫

NHK『花嵐の剣士-幕末を生きた女剣士・中澤琴-』、2017年1月14日
https://www.nhk.or.jp/bs-blog/600/260370.html
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/7000/250010.html

やや古風なことばをつかえば、撃剣ドラマ、ということになるか。

私の見たところでの印象を書いておくと、次の二点。

第一には、まず述べたとおりの撃剣ドラマとして作ってあるということ。それを描くのに、中澤琴という実在の人物をかりてきている。もちろん、ドラマとしてフィクションであるにはちがいない。しかし、実在した女性剣士を主人公とすることで、なにがしかのリアリティが生まれていることも確かなことだろう。

ともあれ、このドラマ、全編にわたって撃剣の連続である。特に、裾の長い着物を着ての(女性としての恰好での)立ち回りの場面、これなど、女性を主人公にするからこそ描けた。このドラマの見せ場の一つ。はじめて人を斬ったのも、この時。

第二には、新徴組という組織は出てくるのだが、特に、佐幕というスタンスでは描いていない。あくまでも剣士として、己の生きる道をさぐるために生きている、それがたまたま新徴組であった、というような設定になっている。

そして、新徴組、つまり、戊辰戦争における朝敵になるということで、最後は負けることもはっきりしている。(この負け戦において、中澤琴は、生き延びて昭和の時代まで長生きしたらしい。)

負けることになるからこそ、最後のに生き抜くための剣という方向性が見えてくる。

まあ、だいたい以上の二点が、感想として思い浮かぶことである。

なお、ついでにさらに書いておけば、幕末・明治維新という時代をどう描くか、という観点から見て、エンターテインメントとしては、特に、どの立場を主張するということもない。むしろ、時代の波に翻弄されるなかで、剣をたよりに生きていく姿を描くということになるのか、そのように思う。

蛇足……ところで、NHKの来年の大河ドラマは、西郷隆盛ということらしい。幕末・明治維新を描くことになる。これは、さすがに、単純にエンターテインメントとして作るというわけにはいかないだろう。なにがしかの歴史観というものを、描かざるをえなくなる。ここで、戊辰戦争の発端として、新徴組の江戸薩摩藩邸襲撃ということは、出てくるのだろうか。そして、中澤琴は登場するのであろうか。