京都大学総合博物館「日本の表装-紙と絹の文化を支える-」2017-01-25

2017-01-25 當山日出夫

京都大学総合博物館 平成28年度特別展 日本の表装-紙と絹の文化を支える
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/modules/special/content0060.html

後期の授業が一段落したところで、京都に行ってきた。「日本の表装」の京都大学総合博物館の展示、それから、京都文化博物館の展示「日本の表装-掛軸の歴史と装い-」の後半の展示を見るためである。

京都文化博物館
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_shibun_post/soukou2016/

この前半の展示については、
やまもも書斎記 2016年12月25日
京都文化博物館「日本の表装」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/12/25/8290655

同じ時期に協力して開催した展覧会になる。両方を見てみると、その立場、考え方の違いがわかって興味深い。

京都大学総合博物館の方の展示では、掛け軸などの文化財が、表装という技法・技術によって伝承されてきたものであり、それは、決して長持ちするものではなく、定期的に時期がくれば、やりなおさないといけないもの。つまり、表装を繰りかえすことによって、その文書などは伝承されてゆく。そのとき、いったい、何を残して、どこをどう変えるのかという判断がつきまとう。文化遺産の伝承とはどのような意味であるのか、ここのところから表装という技術のもつ意味を考えるものとなっている。

一方、京都文化博物館の方は、各時代によって、表装とはどのような文化的、社会的、歴史的な文脈のなかにおかれて、行われてきたのか、それを現存している文書を見ることによってたどろうとしている。

表装された文書があったとして、その文書そのものは、古代や中世のものかもしれないが、表装は新しいかもしれない。あるいは、場合によっては、古い表装を残したものかもしれない。表装が新しくなることによって、何かそこに変更が加えられてしまっている可能性もある。しかし、そのようにしなければ、文書の伝承とはできないものなのである。

二つの展覧会の概要をまとめると、以上のようになるであろうか。

ともあれ、今回の二つの展覧会は、表装という文化財にとって身近な存在でありながら、えてして見逃してしまいがちな部分に着目したものとして、非常に興味深く、また、勉強になるものであった。日本のみならず東洋の古典籍をあつかうような研究分野の人にとっては、必見の展覧会である。