『疑心 隠蔽捜査3』今野敏 ― 2017-03-27
2017-03-27 當山日出夫
今野敏.『疑心 隠蔽捜査3』(新潮文庫).新潮社.2012 (新潮社.2009)
http://www.shinchosha.co.jp/book/132157/
つづきである。
やまもも書斎記 2017年3月23日
『果断 隠蔽捜査2』今野敏
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/03/23/8416674
この春休みにと思って、今野敏の「隠蔽捜査」シリーズを読んでいる。これで、第三作目。どうやら、主人公(竜崎)のキャラクターも、安定してきた感じがする。
朴念仁の警察官僚(キャリア)である。警察庁にいたが、ある不祥事をきっかけに、大森署の署長という設定。前作と同様、署長だから、基本的には現場に出るということがない。管理する立場で仕事をする。その竜崎と対照的な位置にいるのが、刑事・戸高。有能だが、ちょっとすねたような態度がある。これは、徹頭徹尾、現場の人間。この組み合わせで、事件に対処していくことになる。
この作品の舞台になるのは、アメリカ大統領の来日。その警備の方面警備の責任を負うことになる。羽田空港は、大森署の管轄下にある。そこにやってくる、アメリカのシークレットサービス。彼らは、空港の監視カメラに不審人物を発見する。テロの可能性がある。だが、羽田空港を閉鎖するわけにはいかない。あくまでも大統領の安全を第一に考えるシークレットサービスと、日本の官僚機構の中にある警察に身をおく竜崎の間で、おこる衝突。一方、戸高の方は、都内でおきた交通事故に奇妙な点を発見して、単独で捜査にあたっているが……そして、登場する女性キャリア。年がいもなく、竜崎は彼女に心引かれてしまううのだが。
今回の作品も、いろいろと見せ場がある。特に、大統領の安全を第一に考えるシークレットサービスのプロ意識と、日本の警察官僚としての竜崎のやりとりが、興味深い。と同時に進行する竜崎の女性キャリア・畠山への思い、煩悶、そして、竜崎の家族、妻、娘とのやりとり……このあたり、警察官僚小説(といいっていいだろう、一般の警察小説とはちがって)としての面白さと、その家庭の事情を描いたホームドラマの面白さが、うまくからみあっての物語となっている。
たとえば、次のような箇所。
自分の役割は、そうした鋭い捜査能力や危機管理能力を持った人間を使いこなすことだと認識していた。キャリアにはキャリアの役割がある。管理者が現役の捜査員と現場感覚を競ってもかなうはずがないのだ。
(p.263)
こういうところを読むと、キャリアを主人公としたこのシリーズが安定してきていることを感じさせる。
次は、『初陣』である。3.5となっている。スピン・オフの物語とのこと。これも、楽しみに読むことにしよう。
今野敏.『疑心 隠蔽捜査3』(新潮文庫).新潮社.2012 (新潮社.2009)
http://www.shinchosha.co.jp/book/132157/
つづきである。
やまもも書斎記 2017年3月23日
『果断 隠蔽捜査2』今野敏
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/03/23/8416674
この春休みにと思って、今野敏の「隠蔽捜査」シリーズを読んでいる。これで、第三作目。どうやら、主人公(竜崎)のキャラクターも、安定してきた感じがする。
朴念仁の警察官僚(キャリア)である。警察庁にいたが、ある不祥事をきっかけに、大森署の署長という設定。前作と同様、署長だから、基本的には現場に出るということがない。管理する立場で仕事をする。その竜崎と対照的な位置にいるのが、刑事・戸高。有能だが、ちょっとすねたような態度がある。これは、徹頭徹尾、現場の人間。この組み合わせで、事件に対処していくことになる。
この作品の舞台になるのは、アメリカ大統領の来日。その警備の方面警備の責任を負うことになる。羽田空港は、大森署の管轄下にある。そこにやってくる、アメリカのシークレットサービス。彼らは、空港の監視カメラに不審人物を発見する。テロの可能性がある。だが、羽田空港を閉鎖するわけにはいかない。あくまでも大統領の安全を第一に考えるシークレットサービスと、日本の官僚機構の中にある警察に身をおく竜崎の間で、おこる衝突。一方、戸高の方は、都内でおきた交通事故に奇妙な点を発見して、単独で捜査にあたっているが……そして、登場する女性キャリア。年がいもなく、竜崎は彼女に心引かれてしまううのだが。
今回の作品も、いろいろと見せ場がある。特に、大統領の安全を第一に考えるシークレットサービスのプロ意識と、日本の警察官僚としての竜崎のやりとりが、興味深い。と同時に進行する竜崎の女性キャリア・畠山への思い、煩悶、そして、竜崎の家族、妻、娘とのやりとり……このあたり、警察官僚小説(といいっていいだろう、一般の警察小説とはちがって)としての面白さと、その家庭の事情を描いたホームドラマの面白さが、うまくからみあっての物語となっている。
たとえば、次のような箇所。
自分の役割は、そうした鋭い捜査能力や危機管理能力を持った人間を使いこなすことだと認識していた。キャリアにはキャリアの役割がある。管理者が現役の捜査員と現場感覚を競ってもかなうはずがないのだ。
(p.263)
こういうところを読むと、キャリアを主人公としたこのシリーズが安定してきていることを感じさせる。
次は、『初陣』である。3.5となっている。スピン・オフの物語とのこと。これも、楽しみに読むことにしよう。
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