『ブッデンブローク家の人びと』トーマス・マン(その四)2017-05-08

2017-05-08 當山日出夫(とうやまひでお)

つづきである。
やまもも書斎記 2017年5月6日
『ブッデンブローク家の人びと』トーマス・マン(その三)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/06/8545571

トーマス・マン.望月市恵(訳).『ブッデンブローク家の人びと』(岩波文庫).岩波書店.1969

上巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b247748.html
中巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b247749.html
下巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b247750.html

この小説を読んでいて気になったことをちょとだけ。

第一は、「コンズル」ということばについてである。読み始めて、最初のうちは、このことばは固有名詞(人名)だと思っていたが、そうではない。読んでいくと、「コンズル」といわれる人物がたくさん出てくる。そのうちで、もっとも頻繁に出てくるのが、この小説の一族の長としてではあるが。

ジャパン・ナレッジで「コンズル」を検索してみた。すると、

男性名詞
1.領事
2.(古代ローマの)執政官
ポケットプログレッシブ独和辞典

とある。「領事」とあるだけではよく分からないのだが、読んでいくと、当時の「市民社会」において、一定の地位にあることをしめす称号のように読み取れる。

このことば、この『ブッデンブローク家の人びと』という小説を理解するうえでは、きわめて重要なことばだと思うのだが、なぜか、訳注とか、解説とかはない。たぶん、今、この小説を翻訳するならば、丁寧な注か解説をつけるべきことばになるだろう。

この本(翻訳、岩波文庫)の出た当時であれば、この程度のドイツ語は、一般教養として知っているということが前提であったのかもしれない。

第二は、「舌鼓」の用例である。

やまもも書斎記 2017年4月22日
「舌鼓」は「したつづみ」か「したづつみ」か
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/04/22/8496134

このことばが、『ブッデンブローク家の人びと』の翻訳文中にも登場する。

上巻、p.236

下巻、p.54

に、「舌鼓」の漢字に「したづつみ」と振り仮名がある。

だからといって、「したづつみ」の方が正しいと主張するつもりはない。両方の語形が行われているなかで、その片方「したづつみ」の使用例として、あげて記録にとどめておきたいのである。

追記 2017-06-05
このつづきは、
やまもも書斎記 2017年5月10日
『ブッデンブローク家の人びと』トーマス・マン(その五)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/10/8552184

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