『白鯨』メルヴィル(その三)2017-05-17

2017-05-17 當山日出夫(とうやまひでお)

つづきである。
やまもも書斎記 2017年5月15日
『白鯨』メルヴィル(その二)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/15/8559378

メルヴィル.八木敏雄(訳).『白鯨』(岩波文庫).岩波書店.2004
上巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b247497.html
中巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b247498.html
下巻
https://www.iwanami.co.jp/book/b247499.html

私が、この小説、岩波文庫版(三巻)を読みながら付箋をつけた箇所、それは、「日本」ということばについてである。この小説には、かなり「日本」の用例がひろえる。

岩波文庫版(三巻)には、各巻に、地図(ピークオッド号の航路)が掲載になっている。それを見ると、船は、アメリカ東海岸から出発して、大西洋を南下。いったん、南アメリカによったあと、アフリカ南端からインド洋にはいる。そして、日本をめざしている。日本近海から、さらに太平洋を南下して、最後には沈没する、という運命をたどる。

ここで思い出すのは、やはりペリーである。このブログでも以前に言及したことがある。

やまもも書斎記 2016年6月11日
ペリーはどうやって日本に来たのか
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/06/11/8108879

やまもも書斎記 2016年6月30日
西川武臣『ペリー来航』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/06/30/8121187

ここで言及した、ペリーの日本来航の航路と同じである。ただ、『白鯨』のピークオッド号は、捕鯨しながらなので南アメリカの方にも行っているが。すくなくとも、アメリカの西海岸から、太平洋をわたって日本にやってきたのではない。大西洋からインド洋を経て、日本をめざした。

そして、これは、歴史の教科書にも書いてあったこと……ペリーの日本にきた目的は、日本近海で捕鯨をする船についての保護であった、と憶えている。

まさに、そのとおり、アメリカから、モービィ・ディックを追って捕鯨の航海をつづける、ピークオッド号は、ほとんどペリーのとった航路をなぞるように、日本近海をめざしてやってきている。

『白鯨』の原著の刊行は、アメリカで、1851年のことと解説にはある。ペリーが日本にやってきたのは、1853年である。ほぼ、同時期といってよい。

なぜペリーは日本にきたのか。そのころ、アメリカの捕鯨はどんなものであったのか。どのような航路をとってクジラを追っていたのか。そのようなことが、この小説を読むと、それなりに理解されるという面がある。

小説の本筋とは関係のないことかもしれない。しかし、ペリーの日本来航は、日本史の大事件である。その背景にどのような事情があったのか、すこしでも、この小説を読むことによって理解できるのではないかと思う。