『おんな城主直虎』あれこれ「虎と龍」2017-06-06

2017-06-06 當山日出夫(とうやまひでお)

『おんな城主直虎』2017年6月4日、第22回「虎と龍」
http://www.nhk.or.jp/naotora/story/story22/

前回は、
やまもも書斎記 2017年5月30日
『おんな城主直虎』あれこれ「ぬしの名は」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/30/8579438

この回も、まだ和尚は健在であったし、ネコも出てきていた。今回は、ネコの映っているカットが多かったような気がする。これは、見ていて楽しい。

ところで、今回は、やはり社会経済史的な観点から、井伊という戦国領主と、その支配下にある人びととのあり方ということになるだろうか。

見ていると、百姓=農民=定住民、それに対して、盗賊団=非農業民=非定住民、というような図式でとらえているように思える。これはこれで、ひとつの歴史の見方なのであろう。

今回は、綿の栽培、その加工ということは出てこなかったが、農業にかかわることとしては、百姓の仕事になるだろう。それに対して、山林の伐採などは、非農業民の仕事、そして、それは、移動する人びと……それが、今回は、盗賊団という設定なのであるが……ということになっている。このような社会経済史的な戦国時代史観というのは、専門家にとってはどうなのかという気がしないでもない。しかし、これはこれとして、ドラマとしては、よく出来ていると思う。

少なくとも、戦国時代の領主は、武芸、武力だけで、支配していたのではない、ということを描き出そうとしている。ここはあくまでも、井伊谷という狭い領地の範囲を、どのように経営していくか、そのために、どのような人材に、どのような仕事を与えるか、また、その人びとと、領主との関係は、どのような人間関係のもとになりたっているのか……このあたりのことを、このドラマは描こうとしているのだと理解する。

これまでのところ、今川、松平(徳川家康)は、たまに登場するとはいえ、基本的に、今川の影響下にある存在としての、井伊の一族である。その狭いなかで、どのように生き延びていくのか、領主としての直虎の手腕が問われることになる。

信長もいずれ登場するのだろうが、まだ出てきてはいない。家康もまだ特にその存在感があるというわけではない。武田、北条も、出てきても、基本的に名前だけである。あくまでも、井伊谷の中で物語は進行する。このあたりが、戦国時代ドラマとして、逆に、新鮮な感じがするところでもある。名の知られた戦国の英雄、大名たちではなく、地方の限られた領地をどのように守り、経営していくのか、その土地にねざした人びとの生活を描こうとしている。

直虎は、どう考えても、「天下」を狙うということはない。「天下」を狙うことのない戦国時代ドラマとして、この物語はあるのだと思う。前作『真田丸』では、信繁自身は「天下」を狙うということはなかったが、「天下」をめぐる騒乱の中で自分の生き方をみつけていた。

「天下」を狙う戦国大名ではなく、盗賊団とどのような関係をとりもっていくことになるのか……まだ、龍雲丸は、直虎の支配下にはいるというわけではない……このあたりが、これからの展開の見どころであろうか。

さて、次回も、和尚とネコは出てくるのだろうか。

このつづきは、
やまもも書斎記 2017年6月13日
『おんな城主直虎』あれこれ「盗賊は二度仏を盗む」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/06/13/8593116

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