『ジャン・クリストフ』ロマン・ローラン ― 2017-09-28
2017-09-28 當山日出夫(とうやまひでお)
ロマン・ローラン.豊島与志雄(訳).『ジャン・クリストフ』(岩波文庫)(全4巻).岩波書店.1986年(改版)
全4冊セット
https://www.iwanami.co.jp/book/b270706.html
九月になって、新学期がはじまる。この作品、この夏休みの宿題にしようと思って、買って読んだ。全4冊である。
はっきり言って、読みながら退屈したところもあるのだが……とにかく地の文による説明が長い、それに、大して大事件が起こるというわけでもない……しかし、この作品、やはり読んでおいてよかったと思う。どうだったろうか、この作品、若い時に読みかけて挫折したことがあるような、いや、もしそうだとしても完全にわすれてしまっている。
ロマン・ローランは、私ぐらいの世代……昭和30年、1955年の生まれ……であれば、世界の文豪を代表する一人である。たしか、出光美術館だったと思うが、ロマン・ローラン展があったのを、学生の時に見に行ったようにおぼえている。今でいえば、ロマン・ローランのアーカイブズである。(追記 2018-11-11 これは記憶違いかもしれない。あるいは、アンドレ・マルローだったのかもしれない。今となっては、若い時の思い出である。)
『ジャン・クリストフ』は、名前は知っていたが、これまで、読み通すことのなかった本である。この年になって、ようやく時間を作って読み通すことができた。このような本を読むのは、若いときか、さもなければ、今の私のように、もう隠居したと自らを思い定めたような境遇でないと難しいかもしれない。人生の多忙な時期に、寸暇を惜しんで読むような本ではないと思う。
もし、この作品を、若い時に読んでいたらどうだったろうか。主人公、ジャン・クリストフの、芸術に捧げる人生に非常に強く共感しただろうかと思う。若いとは、そういうことでもある。
だが、この年になって読むと、芸術に捧げる人生……といって芸術至上主義というのでもないのだが……について、なるほどそのような生き方もあるのかと思う。そして、なにがしかの感銘はある。だが、自分も、ジャン・クリストフのように生きてみようとは、もう思わない。いや、そのように生きることが出来なかった自分の人生を振り返って、思い出をかみしめるような読後感がある。
文学作品には、人生の何時の時点で読むかによって、その印象が変わるところがある。この意味では、『ジャン・クリストフ』は、若い時にこそ読んでおくべき作品である。そこで何を感じるかともかく、この作品に描かれたような芸術とともにある人生というものを、自分の人生の選択肢のなかにふくめて考える可能性のあるときにこそ、この作品は読む価値がある。
もう若くはない私ではあるが、この作品を読んで、やはり心に響くものがあるのを感じる。芸術とは何かということへの問いかけであろうか。自分の人生にとって芸術とはなんであるのか、なんであったのか……しみじみと思って見る、この作品、4冊を読んでいる時間は、そのような時間であった。
ロマン・ローラン.豊島与志雄(訳).『ジャン・クリストフ』(岩波文庫)(全4巻).岩波書店.1986年(改版)
全4冊セット
https://www.iwanami.co.jp/book/b270706.html
九月になって、新学期がはじまる。この作品、この夏休みの宿題にしようと思って、買って読んだ。全4冊である。
はっきり言って、読みながら退屈したところもあるのだが……とにかく地の文による説明が長い、それに、大して大事件が起こるというわけでもない……しかし、この作品、やはり読んでおいてよかったと思う。どうだったろうか、この作品、若い時に読みかけて挫折したことがあるような、いや、もしそうだとしても完全にわすれてしまっている。
ロマン・ローランは、私ぐらいの世代……昭和30年、1955年の生まれ……であれば、世界の文豪を代表する一人である。たしか、出光美術館だったと思うが、ロマン・ローラン展があったのを、学生の時に見に行ったようにおぼえている。今でいえば、ロマン・ローランのアーカイブズである。(追記 2018-11-11 これは記憶違いかもしれない。あるいは、アンドレ・マルローだったのかもしれない。今となっては、若い時の思い出である。)
『ジャン・クリストフ』は、名前は知っていたが、これまで、読み通すことのなかった本である。この年になって、ようやく時間を作って読み通すことができた。このような本を読むのは、若いときか、さもなければ、今の私のように、もう隠居したと自らを思い定めたような境遇でないと難しいかもしれない。人生の多忙な時期に、寸暇を惜しんで読むような本ではないと思う。
もし、この作品を、若い時に読んでいたらどうだったろうか。主人公、ジャン・クリストフの、芸術に捧げる人生に非常に強く共感しただろうかと思う。若いとは、そういうことでもある。
だが、この年になって読むと、芸術に捧げる人生……といって芸術至上主義というのでもないのだが……について、なるほどそのような生き方もあるのかと思う。そして、なにがしかの感銘はある。だが、自分も、ジャン・クリストフのように生きてみようとは、もう思わない。いや、そのように生きることが出来なかった自分の人生を振り返って、思い出をかみしめるような読後感がある。
文学作品には、人生の何時の時点で読むかによって、その印象が変わるところがある。この意味では、『ジャン・クリストフ』は、若い時にこそ読んでおくべき作品である。そこで何を感じるかともかく、この作品に描かれたような芸術とともにある人生というものを、自分の人生の選択肢のなかにふくめて考える可能性のあるときにこそ、この作品は読む価値がある。
もう若くはない私ではあるが、この作品を読んで、やはり心に響くものがあるのを感じる。芸術とは何かということへの問いかけであろうか。自分の人生にとって芸術とはなんであるのか、なんであったのか……しみじみと思って見る、この作品、4冊を読んでいる時間は、そのような時間であった。
追記 2017-09-29
この続きは、
やまもも書斎記 2017年9月29日
『ジャン・クリストフ』ロマン・ローラン(その二)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/09/29/8686909
この続きは、
やまもも書斎記 2017年9月29日
『ジャン・クリストフ』ロマン・ローラン(その二)
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