『モーパッサン短編集Ⅰ』(新潮文庫)2017-09-30

2017-09-30 當山日出夫(とうやまひでお)

モーパッサン.青柳瑞穂(訳).『モーパッサン短編集Ⅰ』(新潮文庫).新潮社.1971(2013.改版)
http://www.shinchosha.co.jp/book/201406/

モーパッサンの短篇については、すでに岩波文庫版『モーパッサン短編選』を読んだ。

やまもも書斎記 2017年9月14日
『モーパッサン短篇選』岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/09/14/8676530

これが面白かったので、他の作品も読んでおきたいと思い、新潮文庫の短編集の三冊を読むことにした。三冊に分けて、テーマ別編集のようにしてある。第一冊目は、ノルマンディーなど地方を舞台にした作品群である。

読んでみて、やはりうまいと感じる。短編小説を読む楽しみを満喫させてくれる作品である。話しの筋として、最後に「おち」のあるものが多い。このような「おち」のある短編小説は、19世紀の小説ならではのものであろう。

「おち」があるといってもよいが、それを角度を変えて見れば、鋭い人間観察の目でもある。人間の心理の機微を微妙に描いている。

それから、地方を舞台にした作品を集めてあるせいか、風景の描写が非常に印象的である。『女の一生』でも感じたことだが、モーパッサンの作品は、物語の筋のはこびと、その背景になる風景の描写が相まっている。それが巧みにくみあわされて、作品の効果をあげている。そのような風景描写の巧さは、地方を舞台にした、この第一冊目の短編集で遺憾なく見ることができる。

とにかく、地方の景色を背景にして、登場人物たちが生き生きとしている。

訳文は、岩波文庫版の高山鉄男訳とくらべると、自由闊達な雰囲気がある。強いていえば、ちょっと俗な感じの訳語がつかってあったりするのだが、それも、読み進めていくと、そう気にならなくなる。これはこれで、すぐれた翻訳の日本語文である。

岩波文庫版のを読んだ時にも感じたことだが、このような優れた短篇小説集を読むと、現代日本の文学が、なんとなくつまらなく思えてくる。いや、現代日本文学もそれなりに面白いのであろうが……私が知らないだけで……もう、この年になると、それらを読むよりも、古典的な評価の定まっている、近代の翻訳作品を読んでおきたくなっている。この方が、ずっと有意義な時間をすごせるような気がしてきている。

モーパッサンを読んで、それから、モームのものを読んだりしている。その傍らで、ドストエフスキーの長編を再読したりもしている。自分の人生、これからどれだけ本が読めるかわからない。であるならば、好きな本、面白い本を読んでおきたいものである。読んで思ったことなどは、順次、追って書いていきたい。

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