『わろてんか』における方言2018-01-15

2018-01-15 當山日出夫(とうやまひでお)

このドラマの話しの運びからいって、伊能栞の母親は、もう登場しないだろうと思われるので、ここで書いておくことにする。

母親(志乃)は、東京下町ことばを話していた。東京で地震があったことを知った伊能栞は、向島のあたりのことを心配していた場面があった。たぶん、向島は母親(志乃)が住んでいたあたりになるのだろう。向島は下町である。

東京の下町で芸者をしていた母親が産んだ子供が栞である。

だが、その伊能栞は、大阪でビジネスをしていながら、東京ことば(山の手ことば)で話している。東京下町ことばは、うかがえない。はたして、伊能栞の母方言はいったいどのことばであるのだろうか。中学まで母親と一緒に暮らしていたとするのならば、東京下町ことばを話していてもおかしくはないのだが。

これは、活動写真という新しい娯楽ビジネスを手がける近代的なビジネスマンとしての伊能栞には、東京のことばでも、山の手ことばの方がふさわしいということである。言い換えるならば、東京下町ことばは似合わない。伊能栞の生いたちはともかくとして、近代的ビジネスマンには、大阪での仕事の場面でも、東京(山の手)のことばがふさわしいということになる。

大阪で商売をするなら、郷に入れば郷に従えで、大阪ことばを話していてもいいようなものであるが、そうはなっていない。近代的なビジネスを表すものとしては、大阪ことばはふさわしくないのである。伊能栞が無理に大阪ことばをつかう場面は、ぎこちなさがともなっている。

それから、てんのことばであるが、これは一貫して京都ことばになっている。これも、大阪で商売をするからといって、大阪ことばになってはいない。もっとざっくりというならば、大阪のおばちゃんのことばにはなっていない。

テレビドラマで、登場人物がどの方言を話しているかという設定は、そのドラマの意図にしたがっている。この観点からは、伊能栞は近代的なビジネスマンとしてこれからも出てくることになるのであろうし、てんは京都育ちということを背景にしての、藤吉をささえる内助の功を描くことになるのだと思って見ている。

コメント

_ 土屋信一 ― 2018-01-15 14時38分23秒

栞は山の手言葉、その母は下町言葉とするのに、疑問を感じます。
私は24歳まで東京の蔵前にいました。20歳のころ、蔵前のスポーツ用具の卸店にコネをつけてスキー板を買いにいったことがあります。番頭さんの丁寧な言葉使いに感動しました。べらんめえ言葉でなく、きちんとした「ビジネス東京語」が存在します。  以上

_ 當山日出夫 ― 2018-01-16 05時43分53秒

なるほど。御指摘ありがとうございます。
その当時として、東京そだちで大阪でビジネスをする人間が、どのようなことばをつかっていたか、というのには、やはり興味があるところです。

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