『謀略の都』ロバート・ゴダード2018-02-09

2018-02-09 當山日出夫(とうやまひでお)

ロバート・ゴダード.北田絵里子(訳).『謀略の都』(上・下)(講談社文庫).講談社.2017
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935739
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935746

「1919年三部作」として出たもの。出た時に順番に買ってはあったのだが、さすがに、全6冊となると、一息で読むのがつらい。積んだままになっていて、今になった。

1919年というと、日本では、大正8年。第一次世界大戦が終わって、パリ講和会議の時である。その時の、パリ、それから、英国を舞台にして、この物語は展開する。

この小説、歴史的背景は忠実に描いてあるらしい。パリ講和会議に、日本の全権として西園寺公望も登場している。

ロバート・ゴダードは、私は、好みである。重厚な歴史的物語とでもいうのだろうか、何層にも積み重なった過去のできごとを、じっくりと語る物語が好きである。ジャンルとしては、ミステリということになる。そのミステリ的要素は、特に強いというわけではない。(奇抜なトリックがしかけてあるということはない。これは、他のロバート・ゴダードの作品に同じ。)

主人公はマックス。第一次大戦中は、英国のパイロットとして活躍。その戦後のこと、父である外交官が、パリで変死する。その謎を解くために、彼は、パリに赴く。そこで出会う、謎のドイツ人。また、ロシア人の女性。おきまりのパターンといってしまえばそれまでだが、さすがにロバート・ゴダードだけのことはある。読んでいて、陳腐さを感じさせない。物語世界に入り込んでいく。

三部作の第一部になる本書では、父の外交官の死の謎を解き明かすところぐらいでおわっている。これから、さらにマックスの冒険の旅がはじまるようだ。

書物を読む楽しみを満喫させてくれる英国探偵小説、そう思っていいだろう。やっと後期試験も終わった。そろそろ花粉症のシーズンになるのだが、年のうちで、おちついてじっくり本が読める時期でもある。楽しみに次の第二部を読むことにしよう。

追記 2018-02-10
この続きは、
やまもも書斎記 2018年2月10日
『灰色の密命』ロバート・ゴダード
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/02/10/8785539