関西大学の東西学術研究所に行ってきた2018-02-12

2018-02-12 當山日出夫(とうやまひでお)

2018年2月10日。関西大学で研究会があった。2017年度の関西大学東西学術研究所の研究例会。

いろいろ興味深い発表があった。まず、金水敏さん(大阪大学)の「村上春樹小説のキャラクター分析と翻訳」。それから、岡島昭浩さん(大阪大学)の「近代方言意識史を目指して-西郷隆盛はどう語らせられてきたか」。

これらは、国語学、日本語学の近年の用語でいえば、役割語とか方言コスプレなどの概念で論じられることのあるテーマである。

金水さんの役割語の発表、著書でその考え方を知ってはいたが、直接、口頭発表でこの話しを聞くのは初めてである。役割語と物語論の分析の融合をめざしていることは理解できるのだが、村上春樹以外の作品でどうなるのか、今後のこの研究の展開に期待したいと思う。

岡島さんの発表は、ちょうどNHK『西郷どん』の放送もあるので、タイムリーな発表であった。西郷隆盛という人物を論じるにあたって、鹿児島方言とのかかわりが、かなり以前からあったことが実証されていたように思う。(ただ、実際に西郷隆盛がどんなことばを話していたのか、このことについて、もうちょっとつっこんだ話しがあると面白かったのだが。)

それから、内田慶市さん(関西大学)の発表。関西大学の、KU-ORCASについて。関西大学も、これからの日本において、東洋学研究を中心にして、拠点として名乗りをあげることになる。その意義を語ったものであった。他にも、日本では、拠点となるべき研究機関、大学などあるが、これから、これらが相互に連携して、デジタル技術をつかって、新たな自分学知の構築ということになるのであろう。

上阪彩香さん(大阪大学)の発表は、私はこれまで何度か聞いてきた、浮世草子の計量分析の話し。このような話し、純然たる人文学系の研究者を相手にして、どのように説得力のある話しをすればいいのか、これは、これからの課題かもしれない。これから、いわゆる文理融合、文理連携の研究領域がひらかれていくなかで、このような研究が重要になってくるにちがいない。

沈国威さん(関西大学)の発表、近代語研究とコーパスの話し。日中の対照言語学の観点から見て、中国語、日本語ともに、近代語の形態素解析とコーパスの構築の重要性を認識させるものであった。

私の話したのは、JIS仮名とUnicode仮名について。これまで、表記研究会、東洋学へのコンピュータ利用セミナー(京大)などで、話してきたものを、整理して、加筆して発表。これは、来月の東洋学へのコンピュータ利用セミナーでも話しをする予定である。特に、秋萩帖の仮名についてこれから考えなければならないと思っている。

仮名という一見すると、自明で当たり前のことのように思える文字であっても、コンピュータで使う文字として仮名・変体仮名がどのように決まっているのか、どう運用することが求められるのか、この方面のことになると、研究はこれからである。

終わって、発表者を中心に懇親会。大学近くのイタリアンのお店。久々に家のそとで楽しくワインなど飲んで、充実した時間だった。