『悲しみのイレーヌ』ピエール・ルメートル2018-04-09

2018-04-09 當山日出夫(とうやまひでお)

悲しみのイレーヌ

ピエール・ルメートル.橘明美(訳).『悲しみのイレーヌ』(文春文庫).文藝春秋.2015
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167904807

たぶん多くの読者がそうであるように、私の場合も、『その女アレックス』を先に読んだ。で、この本が出て、買った。が、なんとなく積んであった本であるが、春休みの間にと思って、取り出してきて読んだ。

『その女アレックス』を読んでいるので、ある意味で結末がどうなるかは予想できるのだが、それでも、この作品のなかにひたりこんでしまう。カミーユという人物造形が魅力的である。

犯罪小説が文学でありうるとするならば、まさにこの作品は文学たりえていると感じさせる。この作品中でも、『アンナ・カレーニナ』とか『ボヴァリー夫人』に言及した箇所がある。いわれてみれば、多くの世界文学の名作は、なにがしかの意味で犯罪を描いたものが多い。ドストエフスキーの作品など、ほとんど犯罪小説といっていいだろう。

私の感じたところでは……『その女アレックス』があまりにも衝撃的な展開のストーリーであったので、どうしてもそれと比較してしまう。が、これは、これで、十分に堪能できる作品になっている。広義のミステリとしての犯罪小説としてなりたっている。強いていえば、文学としてのミステリであることを前提にしての作品といえようか。ともあれ、ある程度以上のミステリ好きにとっては、このての作品の作り方があったかと思わせる。

さて、次は『傷だらけのカミーユ』それから『天国でまた会おう』なのだが(これも、出た時に買って積んである)、これも読んでおくことにしよう。