『武蔵野夫人』大岡昇平2018-05-26

2018-05-26 當山日出夫(とうやまひでお)

武蔵野夫人

大岡昇平.『武蔵野夫人』(新潮文庫).新潮社.1953(2013.改版)
http://www.shinchosha.co.jp/book/106502/

文章は端正であるが、その書かれている内容はというと、戦後まもなくの時期における、性的放縦とでもいうべき世界。不倫小説、いや、姦通小説と言ってもよい。

スタンダールの『パルムの僧院』を読んだ。それを訳していたのが、大岡昇平。残念ながら『パルムの僧院』という小説は、私には、今ひとつよく分からない作品であったのだが、その大岡昇平の訳文に感心した。このような翻訳をなした人が、どのような小説を書いているか、読んでおきたくなった。

やまもも書斎記 2018年5月10日
『パルムの僧院』スタンダール
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/05/10/8848192

この文章を書こうと思って、新潮文庫のHPを見てみると、

不倫小説の極致。昼ドラ顔負けドロドロ夫婦劇!

とある。まさに、ドロドロの不倫小説、姦通小説である。このような作品を、『レイテ戦記』『野火』などの作者が書いていたのかと思うと、これはこれとして興味深いものがある。

ともあれ、背景となる戦後まもなくの東京郊外、武蔵野の「はけ」の自然描写が美しい。だからこそ、というべきかもしれないが、そこで繰り広げられる、男女の関係と心理描写が、きわだったものとして浮かび上がってくる。

なお、解説を書いているのは、神西清である。

大岡昇平は、こんど、『レイテ戦記』の中公文庫版の新版が出る。四巻。これは、買っておいて夏休みの宿題として読もうかと思っている。

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