『街場の憂国論』内田樹2018-06-25

2018-06-25 當山日出夫(とうやまひでお)

街場の憂国論

内田樹.『街場の憂国論』(文春文庫).文藝春秋.2018 (晶文社.2013)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167910945

文庫本ででたものであるので、買って読んでみた。内田樹の本は、時々買って読む。この本も、ブログなど各所に書いたものを編集したものである。内容的には、かなり重複するところがある。

この本で、著者が言わんとしているところは、次の二つのことに要約できるだろう。

第一は、国民経済である。一国の経済をどうするかという議論。これは、その国……この本の場合であれば、日本ということになるが……の国民を養うために、である。その国の国民が、働いて、稼いで、それで生活できるようにするのが、国民経済の基本であるとする。

それをこわそうとしているのが、昨今のいわゆるグローバリズムという図式で語られる。

第二は、教育、なかんずく公教育の課題。これは、次世代の公民を育成するためであるとする。これも、近年の、教育現場への市場原理の導入への批判として語られる。

以上の二点、国民経済と教育、この二つの論点に、この本はつきると思う。

そして、このことは今まで内田樹の本について書いてきたことであるが、きわめて保守的な発想である。言っていることをとりあげてみれば、現政権に対しては、反体制的である。しかし、その心情の底にあるものは、きわめて保守的な心性であるといわざるをえない。

この保守の感覚を、非常によく表している本だと思って読んだことになる。

内田樹の保守の感覚に、時代にあらがう過激さのようなものはあまり感じない。むしろ、市民的感覚と言っていいだろうか。この市民感覚での保守を語った人物として、今世紀初頭に働いた人物として、内田樹の名前は記憶されることになるのだろうと思っている。

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