『城』カフカ(その二)2018-07-13

2018-07-13 當山日出夫(とうやまひでお)

城

続きである。
やまもも書斎記 2018年7月12日
『城』カフカ
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/07/12/8914217

カフカという作家、私の学生の頃には、もっと読まれていたように思う。この頃では、そんなに人気のある作家ということではないように思える。

ところで、『城』を読みながら付箋をつけた箇所を引用しておきたい。

「Kは、これで他人とのあらゆるつながりが断ち切られ、もちろん、自分はこれまでより自由な身になり、ふつうなら入れてもらえないこの場所で好きなだけ待っていることができる、そして、この自由は、自分が戦いとったもので、他人にはとてもできないことだろう、いまやだれも自分にふれたり、ここから追いだしたりすることはできない、それどころか、自分に話しかけることもできまいと、思った。しかし、それと同時に、この確信も同じくらいにつよかったのだが、この自由は、こうして待っていること、こうしてだれからも干渉されずにいられること以上に無意味で絶望的なことがあるだろうかという気もするのだった。」(pp.217-218)

ここに引用したような「自由」についての感覚は、ベルリンの壁の崩壊後の世界に蔓延しているといっていいのではないだろうか。絶望的な自由、無意味な自由、である。ベルリンの壁の崩壊後、社会主義陣営は崩れ去った。その後、多くの人びとは、自由を得たはずである。それが、はたして真の自由というべきものなのか、今の世界は問われているように思える。

また、今日の世界の「自由主義」……そこにあるのは、本当の自由なのだろうか。

カフカの文学は、今日の世界を預言している、このような感覚を読んでいていだくのである。他のカフカの作品を読んでおきたい。

追記 2018-07-14
この続きは、
やまもも書斎記 2018年7月14日
『城』カフカ(その三)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/07/14/8915715

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