『日はまた昇る』ヘミングウェイ2018-07-20

2018-07-20 當山日出夫(とうやまひでお)

日はまた昇る

ヘミングウェイ.高見浩(訳).『日はまた昇る』(新潮文庫).新潮社.2003
http://www.shinchosha.co.jp/book/210013/

世界文学の再読。『日はまた昇る』である。読んだのは、半年ほど前になる。それより前に、若い頃、読んでいたかどうかも、はっきり覚えていない。

この作品、傑作であることは分かるのだが、どこがどうとなるととたんにことばにつまる。どう言っていいか分からなくなる。ただ、小説を読んでいる時間の雰囲気、気分だけが残ると言っていいだろうか。

小説の主な舞台は、フランスのパリ、それから、スペイン。ただ、「今日」「今」だけに刹那的に生きる、幾人かの物語である。読み終わっても、そのストーリーに感銘をうけるという作品ではない。しかし、読んでいるときの、なんとなくけだるい感覚のようなものだけが残る。

おそらく、歴史的には、この小説に描かれているような世界に、非常に共感する時代があり、その世代の人びとがいたということは、確かなことであろう。確かに、この作品は、ある時代、世代の人びとの感覚を、ただその生活の感覚だけをたどって描いている。

読みながら付箋をつけておいた箇所を引用してみると、

「すると、もちろん、ぼくはまたみじめな気持ちに突き落とされた。昼間なら、何につけ無感動(ハード・ボイルド)をきめこむのは造作もないことだ。が、夜になると、そうはいかなかった。」(p.68)

「おまえさんは祖国放棄者だ、で、もう祖国の土の感触もわからない。なのに、えばりくさっている。まがいもののヨーロッパの価値観にすっかり毒されちまっている。」(p.213)

ヘミングウェイの作品は、他に読んだものとしては、長編では、

やまもも書斎記 2018年5月14日
『誰がために鐘は鳴る』ヘミングウェイ
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/05/14/8850880

やまもも書斎記 2018年6月4日
『武器よさらば』ヘミングウェイ
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/06/04/8868453

がある。読んでいって、まぎれもなく『日はまた昇る』は傑作であると感じる。この作品は、確かに、ある時代のある人びとの人生を描き出すことに成功している。他の、ヘミングウェイの作品、短篇など、読んだ上でこの作品は、さらに読みなおしておきたいと感じる。