『日本思想史の名著30』苅部直 ― 2018-07-28
2018-07-28 當山日出夫(とうやまひでお)
苅部直.『日本思想史の名著30』(ちくま新書).筑摩書房.2018
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480071590/
ちくま新書で、『~~の名著30』というのが、いくつか出ているが、これもその一つとみればいいだろうか。雑誌『ちくま』に連載したものをあつめた本である。
読んで感じることは、次の二点。
第一は、「日本思想史の名著」としてとりあげてある〈古典〉そのものを読む、というよりも、それが現代において、どのように読まれているかを軸にしてある点。これをつよく感じるのが、「Ⅰ」のところに収められている諸編。
『古事記』
「憲法十七条」
『日本霊異記』
『愚管抄』
『歎異抄』
『立正安国論』
『神皇正統記』
これらの書物については、原典をどう読むかというよりも、これらの本の思想史的位置づけ、あるいは、後世……特に近現代において……どのように受容されて読まれてきているか、という観点から記述してあることである。
第二は、「Ⅱ」以降の諸編において、名前ぐらいは、むかし高校の日本史の授業で教科書に出てきたことを覚えている人物について、その概略をしめしてあることである。おおむねそのように人物・著作を選んであると感じる。
たとえば、「Ⅱ」では、
山崎闇斎
新井白石
伊藤仁斎
荻生徂徠
『葉隠』
山片蟠桃
海保青陵
本居宣長
平田篤胤
などである。
これらの著作の多くは、岩波の「日本思想大系」で読むことができる。そして、その思想の概略を示すときにも、基本的には、現代の視点から考えることを忘れてはいない。それは、近年の平田篤胤の再評価などに見ることができる。
以上の二点が、読んで感じるところである。さらに加えるならば、「Ⅲ」「Ⅳ」で、
教育勅語
日本国憲法
がとりあげられていることであろうか。教育勅語については、一般にイメージされているのとは異なって、その持っていた近代的な側面を重視している。また、日本国憲法についても、必ずしも護憲派という立場で書かれてはいない。むしろ、現代においては、日本国憲法が、かつての教育勅語になっているとさえ指摘している。
新しいところでは、
丸山眞男『忠誠と反逆』
相良亨『日本人の心』
が取り上げられている。
私が、読んだ感想としては、すでに読んだことのある本であったり(『古事記』などは、昔、その本文データを自分でパソコンに入力したことがある)、歴史の教科書に名前が出てきた人物で、おおよそのことは知っているつもりでいたが、実際にその著作を、きちんと読んではいなかったり、というような事例が多くあることになる。まったく未知の人物というものは、基本的に出てきてはいない。
これから本を読む手がかりとして、この本は、恰好のブックガイドとなっている。
なお、この本では、「中国」それから「支那」の語を使っていない。「チャイナ」と言っている。このことについては、きちんと断り書きがある。これはこれで、筋の通った態度でつらぬいている。いたずらな日本礼賛にもなっていないし、また、事大的にもなっていない。
私としては、この本を読んで、「思想大系」をひもときたくなっている(これは、全巻、買って揃えてある)。また、丸山眞男とか和辻哲郎とかも、再度、読んでおきたいと思う。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480071590/
ちくま新書で、『~~の名著30』というのが、いくつか出ているが、これもその一つとみればいいだろうか。雑誌『ちくま』に連載したものをあつめた本である。
読んで感じることは、次の二点。
第一は、「日本思想史の名著」としてとりあげてある〈古典〉そのものを読む、というよりも、それが現代において、どのように読まれているかを軸にしてある点。これをつよく感じるのが、「Ⅰ」のところに収められている諸編。
『古事記』
「憲法十七条」
『日本霊異記』
『愚管抄』
『歎異抄』
『立正安国論』
『神皇正統記』
これらの書物については、原典をどう読むかというよりも、これらの本の思想史的位置づけ、あるいは、後世……特に近現代において……どのように受容されて読まれてきているか、という観点から記述してあることである。
第二は、「Ⅱ」以降の諸編において、名前ぐらいは、むかし高校の日本史の授業で教科書に出てきたことを覚えている人物について、その概略をしめしてあることである。おおむねそのように人物・著作を選んであると感じる。
たとえば、「Ⅱ」では、
山崎闇斎
新井白石
伊藤仁斎
荻生徂徠
『葉隠』
山片蟠桃
海保青陵
本居宣長
平田篤胤
などである。
これらの著作の多くは、岩波の「日本思想大系」で読むことができる。そして、その思想の概略を示すときにも、基本的には、現代の視点から考えることを忘れてはいない。それは、近年の平田篤胤の再評価などに見ることができる。
以上の二点が、読んで感じるところである。さらに加えるならば、「Ⅲ」「Ⅳ」で、
教育勅語
日本国憲法
がとりあげられていることであろうか。教育勅語については、一般にイメージされているのとは異なって、その持っていた近代的な側面を重視している。また、日本国憲法についても、必ずしも護憲派という立場で書かれてはいない。むしろ、現代においては、日本国憲法が、かつての教育勅語になっているとさえ指摘している。
新しいところでは、
丸山眞男『忠誠と反逆』
相良亨『日本人の心』
が取り上げられている。
私が、読んだ感想としては、すでに読んだことのある本であったり(『古事記』などは、昔、その本文データを自分でパソコンに入力したことがある)、歴史の教科書に名前が出てきた人物で、おおよそのことは知っているつもりでいたが、実際にその著作を、きちんと読んではいなかったり、というような事例が多くあることになる。まったく未知の人物というものは、基本的に出てきてはいない。
これから本を読む手がかりとして、この本は、恰好のブックガイドとなっている。
なお、この本では、「中国」それから「支那」の語を使っていない。「チャイナ」と言っている。このことについては、きちんと断り書きがある。これはこれで、筋の通った態度でつらぬいている。いたずらな日本礼賛にもなっていないし、また、事大的にもなっていない。
私としては、この本を読んで、「思想大系」をひもときたくなっている(これは、全巻、買って揃えてある)。また、丸山眞男とか和辻哲郎とかも、再度、読んでおきたいと思う。
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