『初版 古寺巡礼』和辻哲郎2018-08-18

2018-08-18 當山日出夫(とうやまひでお)

初版古寺巡礼

和辻哲郎.『初版 古寺巡礼』(ちくま学芸文庫).筑摩書房.2012
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480094544/

和辻哲郎の『古寺巡礼』は、若いころに読んだ本であった。二回ほどは読んでいるだろうか。が、それは、今から思ってみるならば、岩波文庫版であった。筑摩書房のちくま学芸文庫版で『初版 古寺巡礼』が出ていることを知って、これも読んでおきたくなって読んでみた。

はっきり言って、若い頃、和辻哲郎『古寺巡礼』はあまり好きな本ではなかった。そのあまりにも理知的なスタイル、仏像を信仰の対象としてではなく「美術品」として見ようとする、その姿勢に、なにかしら違和感のようなものを感じていた。若い頃の読書としては、和辻哲郎の『古寺巡礼』よりも、亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』の方が断然いいと思っていた。

しかし、今回、『初版 古寺巡礼』を読んで見て、その印象はがらりとかわった。和辻哲郎は、なんと初々しい(としかいいようのないような)豊かな感受性で、奈良の古寺、古仏を見ていることか、認識を新たにするところがあった。

ちくま学芸文庫版の解説を読むと、後年の改訂版となったときに、かなりの手を加えたものであるということである。その中には、学問的な誤りの訂正というべきものもある。だが、それ以上に、より理知的で冷静な文章に書きかえているとのこと。(岩波文庫版の解説にも、このところについての言及はあるらしいが、昔読んだときには読み過ごしていたようだ。)

今回、『初版 古寺巡礼』を読んで感じることは……今から、一世紀ほど昔になるのだろうか、奈良の古寺をめぐる旅とは、こんなにも人を感動させるものであったのか、という感慨である。今の奈良の古社寺拝観、観光からは、とても想像ができない。このようにして、古仏に接していた時代がかつてあったのだ、このことを確認する意味でも、この本は一読の価値があると思う。

仏像を見る感覚、感受性、美的意識、というようなことについて、改めて考えてみたいと思った本である。

追記 2018-08-20
亀井勝一郎『大和古寺風物誌』については、
やまもも書斎記 2018年8月20日
『大和古寺風物誌』亀井勝一郎
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/08/20/8946045