『失われた時を求めて』(岩波文庫)(3)2018-11-08

2018-11-08 當山日出夫(とうやまひでお)

失われた時を求めて(3)

プルースト.吉川一義(訳).『失われた時を求めて 3』花咲く乙女たちのかげにⅠ(岩波文庫).岩波書店.2011
https://www.iwanami.co.jp/book/b270829.html

続きである。
やまもも書斎記 2018年11月3日
『失われた時を求めて』(岩波文庫)(2)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/11/03/8989475

この作品、特に波瀾万丈の大活劇があるというのではない。が、読み始めると、この作品の世界にひかれるとことがある。

岩波文庫で三巻目。この巻には、「花咲く乙女たちのかげにⅠ」をおさめる。

この巻も見どころはいくつかある。

まず、一九世紀末のパリの社交界の風俗描写があるだろう。その当時のブルジョアたちの生活がどんなであったか、具体的な店の名前などと友に活写される。

この巻になって、第二巻では、スワンの恋人であったオデットが、スワン夫人になる。そして、自分でサロンをもつようになっている。

また、作家であるベルゴットを軸に展開する、芸術への蘊蓄。

さらには、「私」とジルベルト(スワン夫婦の娘)との恋。

これら……パリでの生活、芸術論、恋のゆくすえ……が、ないまぜになって、この巻を構成している。読んでいって、途中で難渋するところもあっただが、しかし、読んでいって、ふと、小説の世界……特に、ジルベルトとの恋の行方を、行ったり来たりしながら描写してあるあたりになると、思わずに小説の世界の中に、入り込んでいることに気付く。小説世界の中に没入するとでもいうべきであろうか。

こういうのを文学というのだろうと思う。この作品は、一九世紀から二〇世紀にかけての作品である。一九世紀の自然主義的な心理描写をふまえながら、それを、意識の流れのなかに描いている。読んでいって、その意識の流れのなかに、自分自身が一緒に流されていくように感じるのである。

とにかく読んでおきたいと思って読み始めた作品であるが、もうそのとりこになってしまったようである。次の第四巻で、また、時がうつり場所も変わるようである。楽しみに読むことにしよう。

追記 2018-11-10
この続きは、
やまもも書斎記 2018年11月10日
『失われた時を求めて』(岩波文庫)(4)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/11/10/8995254

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