『いだてん』あれこれ「坊っちゃん」2019-01-15

2019-01-15 當山日出夫(とうやまひでお)

『いだてん-東京オリムピック噺-』第2回「坊っちゃん」
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/story/002/

前回は、
やまもも書斎記 2019年1月8日
『いだてん』あれこれ「夜明け前」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/01/08/9022767

今は、ストックホルム編ということである。つまり、日本が最初にオリンピックに参加した時の話しになる。いってみれば、スポーツ版の「坂の上の雲」である。

栗原四三は、海軍兵学校を受験する。しかし、目の検査でおちてしまう。これも、まさに「坂の上の雲」を目指した時代ならではの話しである。日清、日露の戦いに勝って「一等国」になった日本。その日本の若者として、海軍兵学校というのは、自然な選択としてあったことになる。

その一方で、「坂の上の雲」とは無縁の無頼の人生を歩む人間がいる。孝蔵(古今亭志ん生)である。彼には、「一等国」日本も「坂の上の雲」も関係がない。ただ、その日を生きている。刹那的でもある。

現代の寄席の場面で、志ん生(ビートたけし)が語っていた。親に追いかけられるのでもなく、警官においかけられるのでもなく、ただ走るのはスポーツ……それを、いかにも下らなさそうに、しかし、その一方で、そのようなスポーツに人生をかける人間がいることに対する畏敬の念がどこか感じられるような、そんな話しかただった。このあたりの語り口の巧さ、毒舌の巧みさが、ビートたけしならではものであろう。

たぶん、このドラマで、描くのが一番難しいのは、ベルリンのオリンピック「民族の祭典」、そして、幻におわった昭和15年(1940)の「東京オリンピック」だろうと思う。そこを、笑いとギャグでふきとばしてしまうだけの「毒」を、志ん生(ビートたけし)に求めることになるにちがいない。

そして、このドラマを特徴付けているのが、音楽(大友良英)。「坂の上の雲」をかろやかにハイテンポで流していく。海軍兵学校をめざして挫折する人生、しかし、それがまったく惨めさを感じさせないないでいるのは、演出、脚本もあるが、音楽の果たしている役割が大きいと思う。

次回は、東京の高等師範学校での話しになるようだ。これも楽しみに見ることにしよう。

追記 2019-01-22
この続きは、
やまもも書斎記 2019年1月22日
『いだてん』あれこれ「冒険世界」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/01/22/9027685