『感情教育』フローベール2019-02-07

2019-02-07 當山日出夫(とうやまひでお)

感情教育(上)

感情教育(下)

フローベール.太田浩一(訳).『感情教育』上・下(光文社古典新訳文庫).光文社.2014
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334753009
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334753030

ドストエフスキーを読んでいって、ふとフランス近代の小説を読んでみたくなった。十九世紀自然主義文学である。単なる気まぐれであるが。フローベールを、読んでおきたくなった。

その『ボヴァリー夫人』は、以前に読んでいる。が、これも別の訳で読み直してみることにして、(これについては、また別に書くつもり)、『ボヴァリー夫人』と並んで名高い『感情教育』を読んでみることにした。実は、この作品は、まだ読んでいない本であった。

読んでみて感じるところは……次の二点になるだろうか。

第一には、近代自然主義文学ということになるのであるが、どうも、この小説の主人公の恋愛感には、ついていけない。この主人公、同時に二人の女性と恋をしている。この感覚が、現代の我々の恋愛感覚からすると、どうにも理解できない。

まあ、この時代のこの人びとの恋とはこのようなものであると言われればそれまでである。しかし、今ひとつ、主人公の感情に共感できないままで終わってしまった。

第二には、この小説の歴史的背景である。フランス革命後の二月革命の時のことを背景にしてある。このあたりのことも、昔、高校でならった世界史の知識をそう越えるものではない私としては、手にあまる。このような読者のことを思ってであろうが、上巻の始めに、この小説の歴史的背景について解説がある。読んではみるのだが、もうこの年になってからでは、すんなりと頭におさまらない。

もうすこし、近代ヨーロッパ史の知識を勉強しておくべきであった。歴史の勉強というよりも、近代の西欧の文学作品を理解するためにも、歴史の知識は必要である。そう思ってはみるものの、もう手遅れにちかい・・・

以上の二点が、『感情教育』を読んでみて感じるところである。あるいは、フランス語に堪能ならば、そして、近代のフランスの歴史の知識が十分にあるのならば、原文で読んで面白く読める作品なのであろうとは思う。

追記 2019-02-08
『ボヴァリー夫人』については、
やまもも書斎記 2019年2月8日
『ボヴァリー夫人』フロベール
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/02/08/9033686