『ダンス・ダンス・ダンス』(下)村上春樹2019-05-13

2019-05-13 當山日出夫(とうやまひでお)

ダンス・ダンス・ダンス(下)

村上春樹.『ダンス・ダンス・ダンス』(下)(講談社文庫).講談社.2004 (講談社.1988)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203625

続きである。
やまもも書斎記 2019年5月11日
『ダンス・ダンス・ダンス』(上)村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/11/9070999

下巻まで読んで感じるところを記すと次の二点になるだろうか。

第一に、やはりこの小説も「異界」の物語であったということ。

小説中、この世界が実は虚構のもので、本当は別の世界があるのかもしれない……このような意味のことが、たびたび言及される。まさに、この小説のなかで起こるできごと、ハワイへの旅行、殺人事件……これらは、実は、別の世界で起こったことなのかもしれない。

あるいは、現実にあるこの世界がゆがみ、亀裂が生じて、別の世界と交わり融合する瞬間がある、とでもいうことができようか。

そして、この小説において、物語は、最初に出てきたホテル……札幌にある「いるかホテル」に舞台がもどる。そこで、再び起こる、異界の出現。この世界から別の世界へと、時空が転変する。

第二に、村上春樹の作品は、その書かれた時代……この作品であれば80年代ということになるであろう……の、時代風俗を各種の「記号」であらわしている。それが、音楽であったり、食べ物であったり、ファッションであったり。

読みようによっては、まさに80年代の風俗小説と読めなくもない。だが、そのような時代の制約を描きながら、この作品は、普遍性をめざしている。現実と思っているこの世界が実は虚構のものにすぎないのではないか、日常世界の裏にひそむ異世界への感覚である。

そのキーワードになるのが「雪かき」であるのかもしれない。80年代の「高度資本主義」の世界のできごとは、後になって思い返してみれば、「雪かき」のようなものだったのだろうか。

以上の二点が、『ダンス・ダンス・ダンス』を読み終わって感じるところである。

ところで、これまで、村上春樹の作品を読んできた。おおむね、『1Q84 』からさかのぼる形で読んで来た。そのなかで感じることは、上述のような異世界への感覚である。ここで、この作品では、エレベーターが重要な意味を持つものとして登場している。

学生の時に習ったこと、文化人類学、民俗学の知見でいうならば、カプセル状のものに閉じ込められて、この世界と別世界を移動するということがある。たとえば、「桃太郎」の話しにおける「桃」がそうであり、「かぐや姫」の話しにおける「竹」が、そのように解釈できる。

このような文化人類学的、民俗学的な解釈からしても、まさに、エレベーターは、現代という時代における、異世界への入り口としての役割をはたしていることになる。そういえば、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』でも、エレベーターが重要な意味を持っていたと読むことができるかもしれない。

さて、残る長編は、一番新しい作品になる『騎士団長殺し』である。

追記 2019-05-18
この続きは、
やまもも書斎記 2019年5月18日
『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編)(上)村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/18/9073907

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