『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編)(上)村上春樹2019-05-18

2019-05-18 當山日出夫(とうやまひでお)

騎士団殺し(1)

村上春樹.『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編)(上)(新潮文庫).新潮社.2019(新潮社.2017)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100171/

続きである。
やまもも書斎記 2019年5月13日
『ダンス・ダンス・ダンス』(下)村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/13/9071854

『1Q84』から、基本的にさかのぼる形で村上春樹の作品(長編)を読んできている。そして、のこっていたのが、この最新の作品『騎士団長殺し』である。

これまで村上春樹を読んできて思うことを書いてみるならば……村上春樹は、現代において「異界」を描いている作家である、ということである。この世の世界とは別にある、しかし、この世からすぐそばにある、あるいは、この世が反転した別世界のように、「異界」はある。

『騎士団長殺し』は、文庫本で四冊になる。第1部の上巻を読んだ限りでも、「異界」への入り口が描かれる。

その一つは、主人公の家の敷地のなかにあった、石のほこら。そこから、ある夜ふけから、鈴の音が聞こえる。不審をいだいて、その石組みを解体してみることになる。そこにあったのは謎の空間である。まさに、これこそ「異界」でなくて何であるのだろうか。

また、家の屋根裏から発見された謎の絵……「騎士団長殺し」、これは何を意味するのか。

いや、そもそも、この小説の主人公は、肖像画家という設定である。肖像画も、また、この現実の世界から離れて、絵という異世界に人物をうつすことにほかならない。

謎の絵、肖像画を依頼した謎の人物、そして、謎の空間……これらをふまえて、この小説は、どのような展開を見せることになるのだろうか。次巻以降を楽しみに読むことにしたい。

追記 2019-05-24
この続きは、
やまもも書斎記 2019年5月24日
『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編)(下)村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/24/9076256