『東京綺譚集』村上春樹2019-06-15

2019-06-15 當山日出夫(とうやまひでお)

東京綺譚集

村上春樹.『東京綺譚集』(新潮文庫).新潮社.2007 (新潮社.2005)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100156/

続きである。
やまもも書斎記
『神のこどもたちはみな踊る』 2019-06-14
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/06/14/9086543

これは、二十一世紀の日本文学の最高の作品ではないだろうか。

おさめてあるのは、何かしら奇妙な物語である。だが、怪異譚という類ではない。ちょっと不思議な話しである。そのちょっと変わった話しのなかに、読んでいて思わず引きずり込まれるような印象がある。

文学的感銘というのともちょっと違う。しかし、何か、心に残るものがある。たぶん、この日常の世界を、ちょっと視点をずらしてみたときにたちあらわれる別の顔、とでもいうことができるだろうか。

村上春樹は、長編作品においては、異界の物語を多く書いている。この作品には、異界というべきものは出てこない。しかし、今の世界が、ふとしたひょうしに反転して、ポジの世界がネガになる、それを経過したものとして、元のポジの世界が再構築される、このように言うこともできるかもしれない。

これまで、村上春樹の作品を、長編、短篇と読んで来て……この『東京綺譚集』において、その文学的達成の頂点にあると感じる。が、のこり『女のいな男たち』がある。これを続いて読むことにしよう。

追記 2019-06-17
この続きは、
やまもも書斎記 2019年6月17日
『女のいない男たち』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/06/17/9088040