NHK映像の世紀プレミアム13「戦場の黙示録」2019-06-24

2019-06-24 當山日出夫(とうやまひでお)

NHKのBSで放送の『映像の世紀プレミアム』第13集「戦場の黙示録」。2019年6月22日(土)の夜の放送を録画しておいて、翌日の日曜日に見た。思うことなど、とりとめなく書いてみる。

二〇世紀は、戦争の世紀であった。番組は、第一次世界大戦からはじまっていた。そういえば、若いとき、『西部戦線異状なし』(レマルク)を読んだのを憶えている。

番組を見て感じることは、ともかく、事実(映像、音声)の持っている圧倒的な説得力である。戦争については、様々に論じられて、語られてきた。今もそうである。だが、その多くの議論も、残された映像や音声の迫力の前には、影がうすれるという印象を持つ。

第一次世界大戦から、幾人かの英雄がうまれた。その一人がヒトラーであった。今の時代において、ヒトラーを評価するということはないのだが、しかし、なぜ、ヒトラーが生まれ、ナチスのドイツになっていったか、その経緯については、様々な研究が必要になってくるだろう。

太平洋戦争の始まりは、真珠湾攻撃からはじまった。その映画が日本で作られたことは知っていた。そして、その特撮監督が、円谷英二であったことも知ってはいた。しかし、この映画に、原節子が登場していたことは知らなかった。その登場のシーンは、まさに美しかった。

今の我々は、歴史の結果を知っている。第一次世界大戦の結果も、また、その後に起こった第二次世界大戦の結果も知っている。しかし、そのような結果を知っている目から見て、もし、あのとき、あの人物が異なった判断をしていたら歴史の局面は変わっていたかもしれない、そう思わせるところがいくつかある。

番組で印象的に描かれていたのは、ダンケルクの撤退作戦。それからノルマンディー上陸作戦。これらのとき、もし、誰かが違った判断をしていたら、歴史の行方は、また違ったものになっていた可能性がある。

第二次大戦のはじめのころ、英国においては、ドイツとの講和論があったことが紹介されていた。これも、今になったからこそ言えることなのかもしれない。

太平洋戦争において、米軍のB29による空爆は、多大の被害をもたらした。そのB29の開発が、原爆の開発よりも多額のコストをかけたものであることを知った。それだけ期待されたB29である。成果を出さなければならない。そのために、一般市民を対象とした、焼夷弾による無差別爆撃であった。

そして、マッカーサーの栄光と凋落。番組は、朝鮮戦争で終わっていた。朝鮮戦争は、厳密な意味では今でも終わっていない。勝者のいない戦争であったことになる。

番組は、朝鮮戦争の終結とマッカーサーの退場ということで終わっていたが、その終わった後のエンディング、タイトルの画面に映し出されたのは、現在の北朝鮮軍の軍備増強の映像であった。ナレーションはここで何も語っていなかったが、しかし、この最後のエンディングの映像に、この番組をつくった制作者の意図があると感じる。

今の時代に戦争があるとしても、もはや「勝者」はいない。番組ではあつかっていなかったが、その後、今世紀になってからのイラクとの戦いにおいて、「勝者」といえるものはいなかったといってよい。テロとの戦いには、「勝者」はいない。

戦争とは勝利するために戦うものであると語ったマッカーサーの後の時代において、人間は何のために戦ってきたのだろうか。また、何のために戦おうとしているのであろうか。