『いだてん』あれこれ「走れ大地を」2019-07-30

2019-07-30 當山日出夫(とうやまひでお)

『いだてん』2019年7月28日、第28回「走れ大地を」
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/story/028/

前回は、
やまもも書斎記 2019年7月16日
『いだてん』あれこれ「替り目」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/07/16/9129176

五・一五事件で殺されてしまうことになる犬養毅であるが、今、その声の録音が残っている。国立国会図書館のHPで聞くことができる。一九三二年(昭和七年)、まさに五・一五事件の起こった年の録音である。

国立国会図書館
歴史的音源
犬養毅 演説:新内閣の責務(上)
info:ndljp/pid/1316931

http://rekion.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1316931

これを聞いてみても、満州事変の事態の収拾ということが、政治家としての緊急の課題であったことが理解される。

この回で描いていたことは、次の二つになるだろうか。

第一には、田畑政治のメダル獲得至上主義である。

オリンピックは、メダルを取るために参加する。メダルが取れなければ意味がない。この田畑政治の主張するような、メダル獲得至上主義は、今日におけるオリンピックへの批判として、よく目にするものである。ここは、あえて、田畑政治をそのような人物として描いているのだろう。そして、田畑政治がひとりで頑張るところに、ちょっと距離をおいて見てみると、何かしら滑稽さがある。

田畑政治のメダル獲得至上主義を描くことによって、今日のオリンピックのあり方を、どこか冷めた目で見ることにつながると感じるところがある。田畑政治が大真面目に、メダルのことを語れば語るほど、それが、どことなく空虚にも思えてくるのである。

第二には、五・一五事件である。

歴史的には知られた、また、昭和の歴史の大きな転換点のひとつになったこの事件のことを、このドラマでは、非常に印象的に描いていた。なぜ、軍人たちが事件をおこすにいたったのか、このところにはあまり踏み込んでいないと感じた。表面的には、満州国建国、軍拡主義にはしる軍部と、それに対抗する、政党政治の立場を守ろうとする犬養ということになるようだ。

満州国建国ということで、世界の中で孤立することになりながらも、日本は、だからこそオリンピックに出場するのである……このような描き方であった。これは、これとして、オリンピックをあつかったドラマとしては、このようになるのであろう。いや、ならざるをえない。

以上の二点が、この回を見て思ったことなどである。

次回は、ロサンゼルス大会のことになるようだ。ここでの日本人選手の活躍をどのように描いて見せるのか、楽しみに見ることにする。ついで、ベルリンの「民族の祭典」であり、そして、幻におわった一九四〇(昭和一五)年の東京オリンピックということになる。世界の歴史のなかで、オリンピックもまた激動の時代を迎えることになる。スポーツと平和の祭典ではなくなっていく歴史であるのかもしれない。

これからの世界の歴史、日本の歴史のなかにおいて、日本とオリンピックをどう描いてみせるのか、楽しみである。

追記 2019-08-06
この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月6日
『いだてん』あれこれ「夢のカリフォルニア」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/06/9137958

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