「信濃路」堀辰雄 ― 2019-08-08
2019-08-08 當山日出夫(とうやまひでお)
堀辰雄.『信濃路』(「大和路・信濃路」新潮文庫).新潮社.1955(2004.改版)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100406/
続きである。
やまもも書斎記 2019年8月3日
「大和路」堀辰雄
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/03/9136738
「信濃路」としていくつかの文章が収録されている。どれも詩情ゆたかな小品である。しかし、散文詩というのとは違っている。読んでそこに〈詩〉を感じる、それが散文として書かれているのである。おそらく、信州を文学的に描いたものとしては、抜きん出ているのではないだろうか。
ところで、信州というのは日本文学においてどんな意味があるのだろうか。
堀辰雄に代表されるような、高原のサナトリウムという文学的な場所でもある。他に思いうかぶところを書いてみるならば、まずは、島崎藤村『夜明け前』がある。
やまもも書斎記 2018年2月23日
『夜明け前』(第一部)(上)島崎藤村
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/02/23/8792791
信州を舞台にした文学の代表と言っていいだろう。
それから、松本を描いた作品として、私が若いときに読んだものとしては、『どくとるマンボウ青春記』(北杜夫)がある。この本は、何度か読み返したものである。
また、今ではもう読まれなくなってしまったかもしれないが、臼井吉見の『安曇野』が思い浮かぶ。これは、若いときに買って読んだ記憶がある。
無論、立原道造なども思い出す。
ところで、「信濃路」である。「大和路」につづけて読んだのだが、詩情ゆたかな文章というのは、このような文章のことをいうのだろう。このような文章が、近年ではすくなくなってしまっていると感じるのは、偏見にすぎるだろうか。
読みながら付箋をつけた箇所。
「一つは釈迢空の「死者の書」を荘厳にいろどっていたあの落日の美しさです。」(p.193)
そう思って見るならば、堀辰雄と折口信夫とは、同じ時代に生きていたことになる。ここは、あらためてということでもないが、折口信夫をきちんと読み直しておきたいと思う。
村上春樹の作品や翻訳などを読むかたわらで、堀辰雄を手にしている。このような詩的な文章をよむと、何かしらほっとするような気がする。そろそろ、秋からの講義の準備も始めなければならない。前期の授業の採点などもある。夏は夏で、いろいろと忙しい。その合間に、ふと気がやすまるような文章である。
https://www.shinchosha.co.jp/book/100406/
続きである。
やまもも書斎記 2019年8月3日
「大和路」堀辰雄
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/03/9136738
「信濃路」としていくつかの文章が収録されている。どれも詩情ゆたかな小品である。しかし、散文詩というのとは違っている。読んでそこに〈詩〉を感じる、それが散文として書かれているのである。おそらく、信州を文学的に描いたものとしては、抜きん出ているのではないだろうか。
ところで、信州というのは日本文学においてどんな意味があるのだろうか。
堀辰雄に代表されるような、高原のサナトリウムという文学的な場所でもある。他に思いうかぶところを書いてみるならば、まずは、島崎藤村『夜明け前』がある。
やまもも書斎記 2018年2月23日
『夜明け前』(第一部)(上)島崎藤村
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/02/23/8792791
信州を舞台にした文学の代表と言っていいだろう。
それから、松本を描いた作品として、私が若いときに読んだものとしては、『どくとるマンボウ青春記』(北杜夫)がある。この本は、何度か読み返したものである。
また、今ではもう読まれなくなってしまったかもしれないが、臼井吉見の『安曇野』が思い浮かぶ。これは、若いときに買って読んだ記憶がある。
無論、立原道造なども思い出す。
ところで、「信濃路」である。「大和路」につづけて読んだのだが、詩情ゆたかな文章というのは、このような文章のことをいうのだろう。このような文章が、近年ではすくなくなってしまっていると感じるのは、偏見にすぎるだろうか。
読みながら付箋をつけた箇所。
「一つは釈迢空の「死者の書」を荘厳にいろどっていたあの落日の美しさです。」(p.193)
そう思って見るならば、堀辰雄と折口信夫とは、同じ時代に生きていたことになる。ここは、あらためてということでもないが、折口信夫をきちんと読み直しておきたいと思う。
村上春樹の作品や翻訳などを読むかたわらで、堀辰雄を手にしている。このような詩的な文章をよむと、何かしらほっとするような気がする。そろそろ、秋からの講義の準備も始めなければならない。前期の授業の採点などもある。夏は夏で、いろいろと忙しい。その合間に、ふと気がやすまるような文章である。
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